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<連載・断面>本願寺派の現状と課題 第1回

2015年1月23日付 中外日報

“内向き”体質の改善を

社会貢献を掲げ

浄土真宗本願寺派は2012年度から「具体的な社会貢献」を掲げる「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)に取り組み、昨年6月の大谷光淳門主の就任を機に策定が進む「(仮称)宗門総合振興計画」大綱試案でも「仏教の精神に基づく社会への貢献」を基本方針の一つにするなど近年、積極的に社会と関わっていく姿勢を示している。その背景には“内向き”とされてきた従来の教団の体質改善の問題がある。

「また差別やヤスクニ(靖国)の話か」。九州のある住職は、教区や宗務行政の最小単位である組の研修会のたびに、参加した僧侶らの愚痴ともつかぬつぶやきを聞いてきた。

被差別部落の大半が本願寺派の門徒とされ、また過去の戦争協力問題を抱える同派にとって、人権や非戦・平和、靖国問題は重要なテーマだ。実践運動の前身である基幹運動では特にそれらの取り組みが推進され、有志のグループによる自主的な活動も少なくない。

だが、「扱うテーマが偏り、熱心な人とそうではない人の温度差が顕著で、推進役も同じメンバーばかり。基幹運動は広がりを欠いた」と宗門関係者は口をそろえる。

09年に実施された第9回宗勢基本調査では、住職の32・6%が「人権・差別問題」に実際に関わっていると答えたが、同問題を「重要と思う」と回答したのは20・1%。

前出の住職は「教区などが主催する研修会は出席にある程度強制力があるので、差別やヤスクニなどに関する内容でも一定の参加はある。しかし出席はしても興味のない人が多く、評判も悪かった」とし、「そもそも僧侶の社会問題全般に対する関心が低いという問題もあるが、そういう(広がりを欠いた運動を続けてきた)意味での“内向き”の姿勢にも問題があった」と語る。

取り組み幅広く

こうした基幹運動の反省を踏まえ、実践運動では「実践目標」を教区や組などが任意で設定できるよう改め、人権や平和問題だけでなく、東日本大震災の被災地支援をはじめとする様々な取り組みが進む。

ただ、被災地支援などの利他的な活動をめぐり「よいことをしたくてもできない罪悪深重の私が阿弥陀様に救われるという浄土真宗の教えから、どう社会貢献の教学的な整合性が導き出されるのか」との指摘もある。

徳永一道・勧学寮頭によると、そのような意見が出る背景には江戸時代以降の教学展開にも要因がある。

「僧侶は世俗に口を出すな、というのが江戸幕府の政策だった。このため浄土真宗の救いの論理は、おのれ一人の問題とする傾向が強まった。その影響が今も残っている」という。

だが、親鸞聖人は、誰もが普遍的に救われる大乗仏教の中でも、浄土真宗は「至極」だと説いた。徳永寮頭は「自分の救いだけにとらわれてはならない」と話す。

仏智に導かれて

光淳門主は16日に発布した「伝灯奉告法要についての消息」で、「仏智に教え導かれて生きる念仏者として、山積する現代社会の多くの課題に積極的に取り組んでいく必要があります」と指摘。

「まさにこのような営みの先にこそ、『自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現に貢献する』道が拓かれていくのでありましょう」と述べた。

東日本大震災などを機として宗教者、そして宗教教団がいかに社会と関わるべきかは宗教界全体にとって大きな課題となっている。本願寺派が「現代社会の多くの課題」にどう取り組み、「仏智に教え導かれて生きる」自覚をいかに深めるのかが問われている。