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<連載・断面>本願寺派の現状と課題 第3回

2015年2月4日付 中外日報

社会貢献へ足場づくりを

諸問題に関心を

原発事故の被害に苦しむ福島県の子どもたちを招き、レクリエーションや交流行事を楽しんでもらう保養事業に取り組んでいる浄土真宗本願寺派の教区や組(宗務行政の最小単位)は少なくない。

「第二の故郷ができたような気がしました。自分一人で生きているんじゃないんだなと思いました」。参加者からの感謝の言葉が活動の励みとなる。

しかし、問題点を指摘する声もある。ある住職は、保養事業の実行委員を務める教区の若手から「原子力問題を考える時間も設けるべきだと提案したが、そこまで踏み込む必要はないと、他の委員から一蹴された」と相談を受けた。

「子どもたちに原子力という“重いテーマ”を持ち出すのは難しい面があるとは思うが、問題の背景にあるものも、きちんと見据えなくてはならないと思うのだが……」

この住職がこの時に抱いたのと同じ疑問は、保養事業に関わる他教区の僧侶からも聞かれた。

保養事業に限らず社会貢献活動には、それに取り組まねばならない社会的な背景がある。教団、あるいは宗教者の立場や能力でできることには限りがあるが、少なくとも現代の諸問題の実態に積極的な関心を持ち、理解や認識を深める必要がある。

潜在化どう把握

2015年度に、若者が抱える「生きづらさ」の現状を学ぶための公開講座の開催が検討されている。

昨年4月に開設された「子ども・若者ご縁づくり推進室」の取り組みで、不登校、いじめ、リストカット、摂食障害などが同講座のテーマの候補に挙がる。「若者へのご縁づくり」推進のため、まず彼らが抱える諸問題の実態を把握することが目的だ。

公開講座の立案に関わる佐賀県伊万里市・浄誓寺衆徒の古川潤哉氏(38)はエイズ問題の啓発などに関わったことがきっかけで若者が抱える様々な問題に直面した。「生きづらさ」を抱えた若者の支援活動にも参画し、県内の公立中学校では僧衣のまま「生と性と死を考える」と題した性教育の授業も年間約20回行っている。

「例えば、性の乱れには、虐待やいじめを受けた青少年が性交渉に自己肯定感の充足を見いだそうとするという要因がある」

家庭環境が悪く「中学を卒業せず、漢字もろくに読めない少女」にも出会った。福祉サービスを受けるよう勧めたが、「字が読めないから役所には行きたくない」と拒まれた。

「そうした問題を抱えた子どもたちは助けを求める声を上げることすらない。顕在化していない問題にどうアクセスできるのかも考えねばならない」と古川氏は言う。

受け皿なければ

さらに、社会貢献活動への意欲があっても、社会の側に僧侶の受け皿があるとは限らない、と指摘した。

東北大の臨床宗教師研修を修了した岐阜市・浄慶寺衆徒の田中至道氏(26)は昨年4月、真宗大谷派僧侶の医師が院長を務める岐阜県大垣市の病院に「臨床宗教師」として雇用された。

同病院が臨床宗教師研修の実習先だったことがきっかけ。「もともと宗派のビハーラ活動者養成研修も受講していたが、実際に受け入れてくれる病院は100のうち一つあるかないか。活動の現場を与えてくれるチャンスは積極的につかみにいかなくてはならないと思った」と振り返る。

4年前から広島県の県立病院で緩和ケアチームに所属する広島市佐伯区の徳永道隆・延命寺住職(47)もチームに所属できるまで苦労を重ねた。毎週院内カンファレンスに参加しているが、今も回診に同行することは認められていない。

「一つ一つ成功体験を積み重ね、丁寧に足場をつくっていく。そうやって後に続く志を持った僧侶が誰でも参加できる環境づくりをしていきたい」と願う。

宗派も、宗教者を拒否する傾向が強い日本の医療文化を少しでも変えていこうと、宗門有縁の医師でつくる「西本願寺 医師の会」(8日発足予定)の結成を計画するなどの取り組みを行っているが、現時点で社会的影響力は未知数。

多くの僧侶にとって「個人的な人間関係の積み重ねで、行政や市民団体のネットワークに参画しているのが現状」(古川氏)だ。

僧侶の社会参画意識を喚起するだけではなく、宗派として、広く教団外に向けた社会貢献活動の足場づくりも求められている。

(おわり)