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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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風鐸

宗教や社会の諸情勢について思いをつづるコラム。軒下につるした風鐸の音色のように、読者の心に響くことを願って……。

散骨とムスリム

2017年11月29日付 中外日報

故人の遺骨を海にまく海洋散骨に同行した。2年を置いて亡くなった80歳代の母と父との「一緒に自然に還りたい」という遺言で、遺族の女性が散骨葬実施の市民団体に委託した。両親の焼骨は混ぜて粉にしてある。チャーター船が京都府北部の港を出て1時間で若狭湾沖に達した◆スタッフのサポートで、遺影を掲げた女性が水溶紙に分包した遺骨をデッキからまくと青い波間にゆっくりと沈み、献花の花びらが海面に広がっていった。参加者全員で黙祷する中で風と波の音が静かに響く。晴天に遠くに浮かぶ島影が墓標のようにも見える◆もともとは母の両親が希望したもので、30年近く前にそれを実現した母親が自らも気に入ったという。散骨には宗教者から「反宗教的」など様々な見方がある。遺骨に特別の感情を持つ人が多い中で、墓参りのように祈るよすががなくなるとの意見も◆これに女性は「祖父は『墓は要らない。何かの折に自分を思い出してくれたら、その場所が墓だ』と言っていました」と、「形」よりも死者との精神的な関係性こそが大事なことを強調した◆女性はムスリムであり、自身は火葬自体を拒否する。だが「残された一人娘として両親の希望をかなえるのは当然のこと。イスラームは親を大事にせよと教えています」と話した。形式よりも心を豊かにする信仰が大事とする考えに納得した。(北村敏泰)