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風鐸

宗教や社会の諸情勢について思いをつづるコラム。軒下につるした風鐸の音色のように、読者の心に響くことを願って……。

「いのち」の映画

2018年9月5日付 中外日報

「いのち」について考えさせる2本の映画を見た。「友罪」(瀬々敬久監督)は「心を許した友は、あの少年Aだった」とのキャッチフレーズで、仕事で挫折し今は町工場で働く元雑誌記者の主人公と、親しくなった元「少年A」との友情と葛藤が軸に◆「息衝く」(木村文洋監督)は、巨大な信者組織を持ち、それを基盤とした政党が国政与党になった新宗教団体が背景。少年時から自らの生き様と信仰を重ねて育ち、その延長に宗教的信念に基づく社会変革を目指した青年たちが、党が安保問題などで同じ与党の保守勢力にくみするのに反発と挫折を味わう筋書きだ◆前者は犯罪や欲望、暴力というむき出しの“人間の性(さが)”の上に、「それでも生きていたい」と血の叫びが発せられ、他者を死なせた人間の贖罪から妊娠中絶まで「いのち」を取り巻く問題がぎっしり詰め込まれている◆後者は原発や生態系、教育や福祉など、「いのち」が育まれる世界の多様な局面がこれでもかと描き込まれ、いずれも新進監督ならではの意欲が見て取れる◆両作を通して、人間のいのちは愛情や個人の信仰など“心の問題”から様々な社会的課題、生命をめぐる諸問題に加え、政治レベルの事象まで、およそ生きていく上での全てのファクターに関わっていることが深く実感される。そして宗教もまた本来、そのような幅を持つべきものだ。(北村敏泰)