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風鐸

宗教や社会の諸情勢について思いをつづるコラム。軒下につるした風鐸の音色のように、読者の心に響くことを願って……。

百年の未来

2019年3月6日付 中外日報

ある教団の新年会で石原慎太郎氏が挨拶し、ホーキング博士がかつて来日して講演した時の聴衆とのやりとりを紹介した。地球のような高度の文明をつくり出した星は、自然のバランスを壊し、宇宙的尺度からすればほとんど瞬間的な速度で自滅する。その「瞬間」とは百年だという◆ホーキング博士は晩年、環境破壊や科学技術の暴走などに警鐘を鳴らし、人類文明の将来に悲観的な見方を示していたが、人類が自滅の淵に立っているという認識には共感する。破綻が「百年」という我々の日常的想像力が届く範囲だというのは強烈なメッセージだ◆終末に関する神話・思想は人類の歴史の黎明期に遡り、現代まで様々な形で繰り返し現れてきた。歴史に何らかの意味・目的を求める立場では、想像力は最終的な破滅か救済、あるいは円環的反復に行き着くだろう◆ホーキング博士の専門領域である科学的宇宙論でも、「熱的死」など究極的未来の宇宙の状態が論じられる。その時間スケールの中に置かれた「百年」はあまりにも卑小である。そこには例えば弥勒下生のような希望の欠片もない◆しかし、ホーキング博士が私たちの日常的時間の延長に自滅の可能性を警告したのは、いま生きている私たちへの強い期待・希望を込めてのことだろう。百年後の子孫への責任を、私たちは厳しく問われているのだ。(津村恵史)