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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

はじめに(2/5ページ)

2011年12月22日付 中外日報

「無縁社会」は消えず

世の中に苦難あふれる

その災厄の中で、確かに人々の支え合いが広がり、多くの絆が結ばれた。だが震災前に言われた「無縁社会」が消えてなくなったわけではない。経済効率優先や格差という矛盾は解消されず、長引く不況の中、厚労省の直近調査で貧困率は史上最悪の16・0%を記録、生活保護受給者は204万人を超えて最多となった。

被災地でも雇用不安が深刻だ。東北は以前から人口減少、経済的地盤沈下が進んでいた。集落や自治体もが疲弊していたところへ集中立地したのが原発だ。巨大地震の衝撃と水素爆発によるひび割れから露呈したのは、実はこの国全体の未来像だったかもしれない。

こんな社会の生きづらさに耐えかねて自殺者が引き続き年間3万人を超える事態が続き、震災後の5月には前年同月比20%増(警察庁調べ)となった。その全てに、あの酪農家らと同様に生きた証しがあったはずだ。

岩手では、都会で「派遣切り」に遭い、仕事もなくうつ状態で実家に引きこもっていた30代の女性が、テレビで食料にも困る被災者の様子を見て、「役に立たない自分なんて邪魔だ」と自殺した。人間をこのように追い詰める社会のままなら、本当の「復興」もないだろう。

生活保護受給者の自殺率は全国一般平均の2倍超(政府の「国民生活基礎調査」)、阪神・淡路大震災の被災地でも被害がひどかった地区の自殺率が今なお非常に高い。

いのちは様々な「苦」に直面している。