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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

はじめに(3/5ページ)

2011年12月22日付 中外日報

自らの生命にではなく自分を排除する社会の側に破壊衝動を向けた残虐事件が後を絶たない。無差別殺人から3年の東京・秋葉原。歳末商戦で街中に看板やディスプレーが輝く。命日にささやかな花束を現場に手向けた被害者遺族たちの傷は今も癒えることがない。

震災2週間後の3月に死刑判決を受けた被告は事件前、職を失い自分を追い込んだ時に、周囲から「お前は頑張り過ぎだ。力を抜け」と言われていたという。「頑張れ日本」。震災以降、都内のあちこちではそんなポスターが目立つ。

大阪市西区のマンション。昨年7月、幼い姉弟が部屋に放置され炎暑の中で衰弱死した。若い母親が周りから孤立し子育てを放棄した。互いに見も知らなかった住民らは事件を機に交流し始め、この夏に一周忌の集いが持たれた。

呼び掛けた若者は「皆、赤の他人でしたが、人間は本質として人との関わりを求めています。孤独を感じている人が一歩を踏み出すきっかけになれば」。何人かの住民が東北へボランティアに出掛けた。

震災を受けて社会に必要なものを1文字で表現すれば何かという生保会社の世論調査で、1位は「絆」、次いで「愛」。「今年の漢字」に選ばれ、「流行語大賞」にも入った。裏付けるように各地で婚姻届が相次ぎ、ネット販売で婚約指輪の売り上げが4割増、結婚相談会社への照会が最高3割も増えた。

震災後、共同生活用シェアハウスの需要が都会で急上昇し、大手コンサルタント会社の意識調査では「家族の絆や身近な人々との関係を大切に」の回答が月ごとに上昇して70%に迫る。「津波から一番取り返したいものは先祖の位牌だ」「葬式によって亡くした肉親との心の折り合いがついた」。被災地では人々がそう訴えたという。

宗教者ではない人々に、「縁起」や「利他」などという言葉でなくとも、人と人との「関係性」を重んじる宗教的とも見える思いがある。無宗教が多数派といわれる日本人だが、意識調査では7割が墓参りや初詣に行き、「神仏にすがりたいと思うことがある」との答えは5割を超える。

震災後、様々な宗教関係書が20万部のベストセラーになり、ビジネス書も含めた雑誌で特に仏教関連の特集が続く。心のよりどころとして宗教が求められている。

その宗教者たちは大震災という桁外れの苦難の中で、様々な支援活動に邁進した。避難所提供から犠牲者の供養、物資輸送や瓦礫撤去、生活援助から悩み事の傾聴まで。多くの人々は、そこに宗教者のあるべき姿を見、宗教への期待を抱きつつ再評価を深めただろう。