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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

死と向き合って 4(2/3ページ)

2012年1月21日付 中外日報

震災直後からこの釜石に密着したノンフィクション作家がいた。「膨大な死の現実とそれに向き合う人々の姿を伝えたい」との思いからだ。

その石井光太さん(34)は千葉さんらの働きを取材し、克明なルポ『遺体 震災、津波の果てに』(新潮社)として出版している。千葉さんがそれも頼りに記憶をたどる当時の様子は、「苦」の連続だった。

トラックで搬入される遺体は日を追って増えた。検視官も足りず、町の医師と歯科医が動員され、みるみる傷んでいく遺体を警察官と調べる。衣服を裂き、腕足の筋が切れる音がする。手伝いに来たボランティアは蒼白な顔で逃げ出した。

「なぜこんなことに」との思いが胸を突いたが、千葉さんは「何とかしないと。自分がやるしかない」と、そこで役目を果たす腹を決めた。

死者、身元不明者リストを基に、遺族に対応し、火葬までの流れと手続きを仕切った。出棺は毎朝早く始まるため、まだ真っ暗で雪が降りしきる午前4時に家を出た。

だが、決して事務的に仕事はしない。「ついこないだまで笑ってた子供やお年寄りです」とまるで生きている人のように接する。家族同士らしい遺体は一緒に火葬場へ送れるよう手配する。学習机を並べた臨時の祭壇で、金魚鉢に倉庫にあったライン用石灰を灰代わりに入れ香炉とした。

何より、肉親を捜しに来た人たちにはわずかでも苦しい気持が安らぐようにと接する。

「辛いでしょうが亡くなった方はご家族に迎えに来てもらえて安心しておられると思います。ほら、お顔が優しくなった気がします」「寒いでしょうから、お服を着せてあげましょう」と話し掛けると、それまで歯を食いしばり全身をこわばらせていた遺族の目から大粒の涙があふれた。