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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

死と向き合って 4(3/3ページ)

2012年1月21日付 中外日報

「皆さんのお気持が分からないと駄目です。それは責任です」。葬儀社にいたころからそうだった。当初はどうしていいのか分からずおろおろするばかりの市職員も、見習うようになった。

こんな日がずっと続いた。被災は広域に及び、各安置所を巡回するバスが来る。無言で体育館に入って来る人々を千葉さんが迎える。その日は幼い男児が小さな体を横たわらせていた。わが子を確認した若い母親は、絶望と緊張のあまり声も出ない。

心が痛み、間に立って男児に囁き掛けた。「これからパパとママに守られて火葬場まで行くことになったよ。遅くなったね。でも、お家に帰ったらママがお料理を作って供えてくれるよ」

母親は息子に駆け寄った。「ごめんね、ママが助けてあげられなくて。いつかまた、もう一度会おうね」。後は嗚咽で言葉にならない。千葉さんは「大丈夫、君はママに感謝してるもんな」。母親は夫と抱き合い背中を揺すって泣き続けた。

千葉さんはほっとした。家族が口にも出せない思いを代わって言葉にする。死に向き合って何も言えないのではなく、少しでも感情を出すことができれば、家族の心も癒える。「なぜ自分が生き残ったのか」と苦しむ遺族への、千葉さんの思いだった。

死者と生者の関係を取り結ぶ。それも「宗教」の領域の一つなら、ここにはまさしくそれがある。千葉さんは40日以上安置所に通いつめた。その間、津波の惨状の現場を見に行くことさえなかった。

(北村敏泰)