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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

死と向き合って 5(1/3ページ)

2012年1月24日付 中外日報
多くの死者が出た釜石の市内中心部。なお廃虚が続く(岩手県釜石市で)
多くの死者が出た釜石の市内中心部

問われる弔いの内実

「こうしてほしい」を形に

岩手県釜石市の旧第2中学体育館の遺体安置所で民生委員、千葉淳さん(70)が世話をしている時、以前に葬儀会社にいた時から親しい日蓮宗仙寿院の芝崎惠應住職(55)が供養に訪れた。

苦痛を顔に浮かべたおびただしい遺体を前に、千葉さんが説明する。「この方は臨月の妊婦さんです」。傍らには6歳の女児と初老の女性の遺体も。「この3人は家族です」。気を使って一緒に並べた千葉さんの声は震えている。檀家の顔も見える。地獄のような光景に、芝崎住職は言葉が出なかった。

後日、二人は互いに「あんたが泣いているのは初めて見たよ」「ご住職も」と言い合った。

死者と遺族に寄り添い続けた千葉さんは、だが「私がいくら頑張っても、お経を読み供養するのはやはりお坊さん。各地からも来ていただき、心から感謝しています」と言う。では、千葉さんが寄り添うのはどういうことなのだろう。

40代の女性が安置所に来た。70歳の母親の遺体を確認したが、傷みが進み変わり果てている。「何とかしてもらえないでしょうか」と懇願された。千葉さんは「では私が代わりにお化粧をしましょう。経験があります」と、道具を借りた。

女性がバッグから出したクリームを厚く塗る。「くすぐったいかもしれんけど我慢してね」とファンデーションを額から顎へと丁寧につける。

唇に明るい色の紅を引くと、苦悶の表情が消え、まるで生きているかのように優しい顔つきになった。「ああ、お母さん」。じっと見守っていた女性は目を潤ませ、千葉さんに何度も何度も礼を言った。

「仏さんに言葉は届かないが、気持は伝わったと思います」。死者の尊厳ということもだが、千葉さんは、亡くなった人、残された人が「こうしてほしい」と思うであろう気持を実現しようとする。

「あなたがしてほしいと考えることを他人にしなさい」。様々な宗教にもそんな教えがある。