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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

死と向き合って 7(1/3ページ)

2012年1月28日付 中外日報
多くの遺体が土葬され、掘り出された境内。今は痕跡も見えない(宮城県亘理町、観音院で)
多くの遺体が土葬され、掘り出された境内

死者の思い受け生きよ

寺はつながり確認の場

多くの犠牲者を仮土葬した宮城県亘理町の真言宗智山派観音院では、身元不明者の確認手掛かりにと、本郷正繁住職(69)が遺体の衣服を保管していた。洗濯機を2台買い、泥だらけのシャツや上着、ズボンを洗って境内に展示した。

中に、かわいい星の模様の入ったピンクの小さなジャンパーがあった。4月下旬、話を聞いた若い父親が訪ねて来た。役場で情報を確認し、棺が掘り出される。

まだ寒さが残り、遺体はそれほど傷んではいない。「やはり」。そう言ったきり父親は黙って5歳の愛娘の頬をなで続けた。「ありがとうございました」と力なく住職に言う表情は涙も枯れていた。妻も津波で亡くなったのだ。

衣服で身元が判明したのは6人。なお不明の遺体は、遺骨が衣服と寺に保管されている。

数週間後、土葬者の改葬が始まった。後から発見された遺体が他県で火葬され、町でも火葬場が復旧したため遺族が役場に強く申し入れた。

だが土の重みで棺ごと押しつぶされ、初夏に入って傷みも激しいため、遺体の掘り起こしは凄惨を極めた。変わり果てた全身の状態に、火葬炉内も無残な状態となった。

境内に大量の石灰を散布して消毒しながらの作業という地獄のありさまに耐えて、本郷住職は現場で読経を続けた。檀家ではなくとも、「坊さんとして当然です」。

肉親には、さすがに近づかないよう助言した。だがつらそうな遺族の引きつった表情を、住職も隆博副住職(43)も忘れない。「2年間」との触れ込みで仮土葬にどうにか納得し、悲しみを抑え込んだ心を再びかき乱されたのだ。

掘り起こしは石巻でもあった。とても家族には見せられない、と葬儀社の若い従業員たちが作業を引き受け、遺体を洗浄して整え、新しい棺に入れ替えて火葬場に送った。死者の尊厳と遺族の心情への思いだった。