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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

死と向き合って 9(3/3ページ)

2012年2月2日付 中外日報

僧侶としての法務や「修行」の末にではなく、職業としての役所の業務の中で「気付き」を得た。宗教者の自覚、根幹の信仰のあり様について、木村さんのケースがどう受け止められるかは分からない。だが、宗教が「苦」を乗り越えるためにもあるなら、その「苦」を正面から引き受けた経験の意味は大きいだろう。

大震災で苦難に立ち向かい続けた多くの宗教者たちに、この災厄で自己の信仰がいかようになったか、揺らぐことはなかったのかを尋ね歩いた。ほとんどの宗教者が木村さんのように「より強まった」と答えた。

木村さんは何カ月もひたすら、「亡くなった方を家族の元にお送りしたい」の一心で仕事に打ち込んだ。が、公務員の立場では僧侶の役目はできず、自らが遺族らや死者の心の支えに十分なれなかったことは仏教者として心残りが大きい。

震災後10日目くらいから身元不明でいつまでも引き取られない遺体が増え、何とかしなくてはと皆が思っていた。それだけに、各地から僧侶たちが安置所へ読経に訪れてくれたことはありがたかった。「私の出番はありませんでした」

そう言う木村さんだが、一度だけ法衣を着ることになった。

(北村敏泰)