ニュース画像
敬白文を読み上げ決意を示す菅管長
主な連載 過去の連載
エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> いのち寄り添うリスト> 原発さえなければ 1
いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

原発さえなければ 1(2/3ページ)

2012年2月21日付 中外日報

国際放射線防護委員会(ICRP)が緊急時に住民避難などの対策を勧告している20~100ミリシーベルトと比べても、とても人が住み続けられる状況ではない。電力会社が「安全」PRで高めの自然放射線の例として一つ覚えのように挙げる、ブラジル・ガラパリ地方よりも大幅に高い。

政府発表などで同地区の放射性セシウム沈着量は1平方メートル当たり300万ベクレル超。これは、チェルノブイリ原発事故で13万5千人が強制移住となった基準である同148万ベクレルの2倍以上だ。もちろん、警戒区域などもっと原発に近い所はとんでもない数値になる。

見渡す限り、動くものは何もない。なだらかな斜面の雑木林、牧場にも美しい渓流にも「いのち」の気配はない。何の罪もなく、生活のためにそれでもとどまっている人々は屋内でじっと息を潜め、「今日は何シーベルトだっぺ」が互いの挨拶代わりという。置き去りにされ錆びた子供の自転車がある。悲しみよりも怒りが込み上げた。

世界の注目を集めた「フクシマ」から多くの「苦」の叫びが発せられた。「事故は人災だ」「福島を返せ」「奪われた家庭と地域の平和」。そんな見出しで事故の影響を告発するミニコミ誌『原発事故さえなければ通信』を福島市大森、曹洞宗円通寺の吉岡棟憲住職(64)が発行している。

「怒りは当然です。幼児から中学生まで子供らは小型線量計を24時間装着させられ、まるで実験動物扱い。苦境にある県民の思いを知ってほしい」と、市民生活の破壊、農業の荒廃、風評被害や、汚染・賠償をめぐる東電や国のひどい対応などを報告。昨年11月に発行し全国に無料で送った創刊号が好評で1万部に増刷した。

各地でアピールもし、12月に東京での青年僧侶らの集まりで話した際は会場が水を打ったようになった。1月に出した第2号では「政府は『収束宣言』を出したが実際は程遠い」と書き、「昨年1年を表す漢字は『絆』よりも『嘘』だ」と訴える。

県内に被害は限りなく広がり、多くの寺院神社なども例外ではなかった。着の身着のままで避難を強いられ、檀家も失ってハローワークに通う僧侶もいるという。