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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

原発さえなければ 3(2/3ページ)

2012年2月25日付 中外日報

「うちも毎日600リットル捨て続けた。出荷先の牛乳工場もつぶれたそうだ」。近所の酪農仲間Mさん(55)は、少しでも乳の出を減らそうと餌を減らしたが、飢えた牛の鳴き声がつらくて耳をふさいだという。

畜産農家も廃業、子牛を処置した。警戒区域内に放置された家畜たちは餓死するか殺処分された。避難中の僧侶がその供養に赴く。生き物の命によって生きる人間。その両方の命の有り様を、生き物と共に暮らす農家は実感して知っている。

「何も死なんでも、とは言えん。生き地獄じゃ」。借金が残ったMさんは「東電も国もひどすぎる。私らは見捨てられるのか」とうつむいた。

この地方で酪農が始まったのは戦後。消費が増大した高度成長期にピークを迎えたがその後は衰退し、若者は出て行って地区は過疎化した。都市部に労働力と資源を供給して経済を支え続けた東北の全体に近年、矛盾が露呈している。

総務省の昨年4月発表では、高齢者が住民の半数以上を占める「限界集落」は東北地方で1027カ所に上る。同省の平成21年「人口推計」によると、都道府県別の高齢化率は宮城を除く東北5県で全国平均をかなり上回った。この震災、津波での犠牲者の3分の2が高齢者だった。

県財政でも、財源不足を補う地方交付税額は福島や岩手で多く、自主財源割合、経常収支比率を含めた「財政力指数」では宮城以外の5県が全国平均以下。岩手は39位、福島は22位(平成17年度発表)だ。そしてこれは、少子高齢化が続く日本社会全体の未来図にほかならない。