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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

原発さえなければ 12(2/3ページ)

2012年3月27日付 中外日報

同じように日に何度もの火葬場通いが連日続く。見るも無残な遺体に接しては「人生観が揺さぶられました」と住職。3桁の番号で呼ばれる身元不明者は、DNAサンプルを採取して深夜に焼かれる。遺族がいても来られない。参列する人は皆が真っ青な顔で呆然としていた。「あまりつらいと涙が出ないのです」

家族全員が亡くなり幼い女児だけが残された家庭もあった。幼稚園生の男児が父親の骨つぼを抱き上げて頬ずりした。だが「死」が理解できず、周囲の親戚が泣くのに「なんで?」と聞く。全英・前住職も胸をかきむしられる思いだった。

苦しい供養だった。「1日が1カ月にも感じられました」。前住職は過労で倒れるまで続けた。一番求められている時、つらい時だからこそ重要だったのだ。

「坊さんがいてくれるとは思わなかった」と安堵する遺族の声に逆に支えられた。泰寛住職は「あんなに必死でお勤めしたのは本山での修行以来です」。全英・前住職は「お布施のないお経というのはいいものだなあと心から思いました」と振り返る。

震災で供養の意味を捉え直した、と死の「苦」に向き合った多くの宗教者が語った言葉をここでも聞いた。「あれから普段の葬式も変わった。それまで年中していたが、決して慣れてはいけないのだと。衣を着てお勤めするその心の準備、その時その時に全身全霊を傾け、仏様に対して肝に銘ずることがなくてはならないと」

そう語る全英・前住職は6月、市内の93歳の老女の葬儀を営んだ。「あしでまといになるから お墓にひなんします」と書き置いて自殺したあの女性だった。

父子とも信心が改まったという。泰寛住職は「肉親を亡くし、家族がばらばらになり、全てを失った皆さんはまるで魂を奪われたようです。亡くなった人を弔いたい、それだけが心の働き、生きる支えでした」と言い、それが分かったから、故人との絆や縁をつなぎ、残された人の気持に寄り添える道が見えた。

「苦しくても悲しくても、それでも生きていきましょう」と口を突いて出た。「それでも縁に支えられて生かされている、という気付きが大事なんです」。仏教が縁の宗教であると、心底から実感した。