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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

原発さえなければ 12(3/3ページ)

2012年3月27日付 中外日報

全英・前住職は「規矩」という言葉を繰り返した。物事の基準、標準のことだ。葬儀などの儀式も寺の伽藍も「正しい規矩に基づいているから正しい雰囲気があり、そこから光が発せられるのです」。岩屋寺では震災後、総檜造りの立派な山門の新築を進めている。

なぜ今、との問いに「この時期だからこそ」という。「どんな苦境にあっても心を安らかにする、そんな環境が寺には必要。自然環境も、規矩による建物もそうです」と、住職在職の50年で伽藍改修を続けてきた。これが最後の仕事で、現住職に引き継ぐ。

今は最も宗教が必要とされている時代だと認識している。坊さんが、ではなく。「どう生きていいか、不安な人々ばかり。そこで、何をもって『大丈夫』『安心して』と言えるかです」

僧侶として、自分に何ができるかを長年模索してきた。「坐禅修行で生き仏になって人々に道を示すのも一つですが、私にはできない」。そこで、道元が中国で学んだ際に寺の建物の図面を持ち帰ったことに倣い、人々の心の集う場として寺域を整備することにしたのだという。

その場で以前からさまざまな催しをして発信を続けてきた。「お説教だけでなく具体的な形で示すのも坊さんの役目です」。そして震災後、境内では被災者が集まる「カフェ」が開かれている。

「自然に手を合わせたくなる門になるはずです」。他の伽藍も建造した宮大工たちが技術伝承も兼ねて丁寧な作業を続ける。境内で最も老朽化して残るのは、こうして父子が語る庫裡だった。

(北村敏泰)