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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支援の広がり 1(2/3ページ)

2012年4月7日付 中外日報

カモメと共に海面を走る白い大型船から見える景色はしかし、津波の爪痕が無残だ。海岸の防波堤は破壊されたままで家々も壊れ、多くの島や岩も崩れたり松が流失したりしていた。名産のカキ養殖のやぐらもあちこちで倒れている。5月に就航再開したものの客はまったく来ない月日が続いたというが、この日は鹿児島と愛知からのグループなどが30人余り。

ガイドの40代の女性はマイクを手に名勝の解説をしながらその被害状況も説明する。「よくこの被災地に来てくださいました」と元気な表情で、「カキや海苔も採れるようになり皆で頑張って作りました」と佃煮などの加工品を勧めた。張り切った声に客が応じる。

一緒に買い求めた折、つい「お宅は大丈夫でしたか」と尋ねてしまった。笑顔は変わらず、だが目に一瞬陰りをたたえた女性は「はい、全部なくしました、全部。父も母も、家も……」。

絶句した。しかし不躾な質問をわびると、明るい声に戻って「でも、もう受け入れてやっていかないとね。また来てください」と返された。不用意を恥じるより、込み上げてくるもので涙を抑えることができなかった。

見送られて下船した松島港の待合ロビーでは、壁の高さ2メートルに津波到達の印があった。そこからすぐの瑞巌寺はまだ雪が残り、春のシーズンというのに参拝客の姿は少なかった。

乗船前に塩釜港の仮設商店街で、食堂やベビー用品店と並んで商売に励む鮮魚店に入った。採れたてのカキが安い。威勢のいい中年の女性店主は、だが「元の店は流されちゃって。でも、もっとひどい目に遭った人も多いしね」と話した。