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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支援の広がり 1(3/3ページ)

2012年4月7日付 中外日報

そこへ向かう途中、道を尋ねた高齢の女性は隣の多賀城市で被災し、仙台の仮設住宅に暮らす。姪とその子供を亡くし、菩提寺である塩釜市内の妙心寺派東園寺へ供養に参るところだった。

東園寺は、まだ一部が不通のままのJR仙石線本塩釜駅近くにある。駅舎はあちこち壁が落ち、立ち入り禁止場所も。

ここから歩いてすぐ、高台の同寺山門脇には「亡き人の想いを生かそう」との掲示があった。千坂成也住職(45)は大学時代にボディービルをしていて、やや小柄ながらがっしり逞しい体格。震災後この寺を拠点に他宗僧侶とも連携しながらあらゆる支援に奔走した。

「随分活動的になりました」。住職は「動中の工夫」という白隠の言葉を引き、「何事でも専一に打ち込むことがそれ」と振り返った。「動中の工夫は静中の工夫の百千億倍」、つまり動きながら考えよとの教えだ。

そして泥かきでもどんな活動でも、それ自体が修行だという。「僧だからではなく、困っている人がいるから動く。もともと宗教はそれを説く。言葉は『後付け』です」という住職には、支援活動の「宗教者らしさ」との論議は、宗教の矮小化にしか聞こえない。

まず震災当日に近所から30人余りの避難者を受け入れ、皆が落ち着くまで1週間、宿泊や食事の世話をした。並行して市の火葬場で4月いっぱいまで犠牲者への読経をした。どの寺も檀家と連絡が取れない状況で、近隣の臨済宗4カ寺、曹洞宗、浄土宗各1カ寺で協力し、遺族の要望に応じて交代で供養した。

身元不明者15人の遺体を東園寺別院で預かり、市が札幌の火葬場に送る前夜、一緒に寝て番をした。多くの死者、生活破壊、膨大な苦を前にしたが、前を向くのが大事と感じた。「檀家の方々も家族を亡くしても動くしかないと前を向かれたのはすごい」と言う。

被災した寺院の住職の「布施は抜きにしても寺で供養の機会を持つことが大事」との言葉を、「それがこの世での宗教の役割」と感じ、前を向くためにも皆で集まって痛みを共有しようと犠牲者の合同供養を営んだ。

5月から2度。「一緒に泣くことが良かった」という千坂住職も檀家13人を亡くした。若い犠牲者の枕経では涙が止まらなかった。

(北村敏泰)