● いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から
支援の広がり 8(2/3ページ)
2012年4月24日付 中外日報
市から委嘱された支援員が仮設住宅を戸別に訪問して声を掛け、安否を確認する(岩手県釜石市で)

3月のある朝、8時から開かれたミーティングには二十数人が顔をそろえた。カーペット敷きで壁際には上げた布団や寝袋、キャリーバッグが積まれ、天井からはシャツなどの洗濯物とハエ取り紙が下がる広い部屋で、車座になったのは多くが若い女性だ。
全員がそろいの黄緑のベストを着けている。スタッフの今村恵美さん(26)がテキパキと事を進める。この日で引き揚げるメンバーが「あっという間でしたが貴重な体験でした」と挨拶。「風が強く寒いので」と気象情報を説明した後、「○○さんの班は仮設訪問。車はそれを使ってください」「写真洗浄はあちらへ」「焼きそば部隊は7人です」と分担を告げる。
「住民の方に、包丁研ぎの希望を聞いてください」、これは研ぎ職人からの支援の受け入れで、研ぐ間に貸し出す予備の包丁まで用意しているキメ細かさだ。ゴミ収集などの連絡事項の後に、舟山神父が短く祈りの言葉を述べた。
「天の神様、私たち一人一人を力づけてください。弱い私たちを使って希望を失った人が少しでも前を向けるよう、気付きを与えてくださいますように」。「アーメン」の発声で全員が合掌する。「未信者の方が多いのですよ」という神父。一見僧侶のような坊主頭を「この方が簡単ですから」とつるりと撫でた。