ニュース画像
敬白文を読み上げ決意を示す菅管長
主な連載 過去の連載
エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> いのち寄り添うリスト> 支援の広がり 10
いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支援の広がり 10(2/3ページ)

2012年5月1日付 中外日報

渥美公秀・大阪大学大学院人間科学研究科教授(ボランティア行動学)は全体の活動傾向が、瓦礫撤去などの作業を能率的に進める「効率性」と、一人一人に寄り添おうとする「個別性」とに二極化する中で、後者重視が圧倒的に多いことを高く評価する。

前者には活動する自分への視線、後者には被災者への視線が感じられ根本的に価値観が異なる、とした上で、「行政機関や企業ではなく、効率を重視する世間の価値観とも違うことこそがボランティア」と強調する。

その利他性は被災した人々同士でも当初から発揮された。原発事故でボランティアの足が遠のいた福島・南相馬の避難所では、長男が行方不明の男性や高齢の町内会長らが世話役として昼夜働き、被災を免れた高校生も「自分だけ温かいご飯を食べていていいのか」と手伝いに駆け付けた。

岩手・陸前高田では無事だった家9軒が115人の被災者を受け入れ、自ら「対策本部」をつくった。宮城・気仙沼の大島では島民たちが肩を寄せ合って命をつないだ。

そんな紐帯は現場が仮設住宅などに移っても引き継がれ、宮城・南三陸の仮設商店街では入居者たちが互いに店の細かい仕事を手伝っていた。

社会学でいう「災害ユートピア」。大規模な災害では、人々はパニックや略奪に向かうよりも利他性を発揮し、相互扶助のコミュニティーが出現する。それは「危険や欠乏を広く共有することで、生き抜いた者たちの間に親密な連帯感が生まれる」(R・ソルニット著『災害ユートピア』から)ためだという。

そして「一般ボランティアが宗教者の本来の活動に近づいている」と指摘した金子昭・天理大学おやさと研究所教授(宗教哲学)は分析する。

「超越的な存在とのつながりにおいて内面性が豊かな人間が真の意味で宗教者。人々のために黙々と尽くす人は、自ら意識しているか否かを問わず実は極めて宗教的だ。そうした人は活動への無限のエネルギーを得る火種を自らの内に持ち、それは超越的存在から贈られたもの」と。個人の宗教性、霊性が災厄の中で光を放つ。