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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支援の広がり 16(2/3ページ)

2012年5月17日付 中外日報

3月中旬の木曜日の朝7時前、通勤客が行き交うJR仙台駅の外れに、30人ほどのホームレス、失業者たちが集まってきた。中年から初老の男性、若者、毛糸の帽子をかぶった女性もいる。「まだ肌寒いね」「手が冷たいっさ」

NPO「ワンファミリー仙台」が当初から力を入れている活動「クリーンボランティア530(ゴミゼロ)」だ。スタッフが配ったそろいの黄緑のジャンパーを目印に羽織り、ゴミばさみと大きなビニール袋を手にする。早速、数人ずつに分かれて周辺の舗道や商店街、公共駐車場でゴミや吸い殻を集め始めた。

理事長を務める元神職の立岡学さん(38)がこれを始めたのは「皆さんに働く喜びを知ってもらうためです」。1時間半ほど仕事をして、弁当と菓子、それに200円の報酬が支払われる。

「ホームレスは怠け者というのは誤解。意思があっても働き口がないのです。被災者もそうなっています」。10年前から通算500回近く、ここから意欲を持って就労し、路上生活から脱した人もかなり多い。

一人一人に人生がある。60歳前の男性は何とか林業の仕事に就いた。「気楽がいい」と言っていたが体調を崩し、やっとアパートに入った。だが受診すると末期がんと診断され、「余命半年」と宣告された。にもかかわらずアパートで禁止の酒を飲む。「何で」と注意する立岡さんと口論になった。激痛でホスピスに入り、NPOスタッフが交代で看護した。

モルヒネで意識がかすむ中で「息子の誕生日が」とこぼす。30年前に妻ともども縁を切っていた。長年迷惑を掛け続けた実兄が「骨だけなら引き取る」と言いながらも連絡に応じ、危篤状態の時に息子が訪ねてきた。

30代半ば。ずっと苦労し、今も派遣切りで失業中で「父を恨んでいる」という。「ネットカフェに泊まる」というのを、立岡さんが「添い寝してあげたら」と勧めた。

そのまま、翌朝9時ごろに男性は息子にみとられて息を引き取った。「いろいろ事情はあったでしょう。でも喧嘩もしたが男気のあるいい人でした。息子さんも父親そっくり。人生というものを学んだ気がします」。息子は遺骨を抱いて北海道へ帰っていった。葬儀を出したのも「ワンファミリー」だった。