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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

駆け付けた人々 3(2/3ページ)

2012年5月26日付 中外日報

82歳の男性の簡素な葬儀をその息子と2人だけでしたのは、ここでのことだ。膨大な遺体に寄り添い続けた警察官たちが心を込めて見送るのに接した住職は、従来の都会などでの葬儀に強烈な違和感を抱いたという。

死者との距離があまりに遠い形式的なセレモニー。葬儀社による進行の中で、お経の読み手としてしか関わらない僧侶。この震災で葬儀無用論がかすんだとされるが、高橋住職は「以前はそんなかすむようなつまらない事で論議していたとしか思えない」と語る。

目の前の死者との深い関係性を第一に置くことと、儀礼の縮小化は別問題だとする。被災地では、事情で通常の儀礼ができなくても葬儀が死者とのつながり確認の糧となり、心の支えとなった。「葬儀の意義は規模ではなく弔いの質」という観念は国中に広まり、今後も葬儀は変わっていくと高橋住職はみる。

震災後のアンケートで大都市では「葬式不要」が減少していないとする興味深い報告がある。葬送・エンディング問題に詳しい小谷みどり・第一生命経済研究所主任研究員の「死と葬送の変容」についての研究だ。

超高齢化と末期医療の拡充による死亡年齢の上昇、病院死が大部分であることなどから、「納得できる大往生」が増え、以前から社会全般で「悲しい死」が減少しているという。勢い、「グリーフワークとしての葬儀」が後退する。

一方で「無縁社会」といわれた、格差や少子化・婚姻率低下による単独世帯の増加で葬儀はますます簡素化すると分析。そのため「葬式不要」が減らないという。被災地で「突然の非業の死」に納得できず葬式が重視されたのとは状況は違う。

ただこの「葬式不要」は「弔い不要」ではなく「納得のいく見送りをするために旧来の形式的な葬式は不要」との趣旨もあることは確実で、小谷研究員は「死者との絆を大切にし、残された者が生活の中に死者の場所を見いだし追憶することは重要」と強調する。