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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 1(2/3ページ)

2012年7月5日付 中外日報

続いて藤澤住職が携わったのは、大槌町などでの仮設住宅の訪問。住み慣れた地から離れ、孤立感を深める人たちの心を支えることが大事だと判断した。僧侶としてではなく、個人でも受け入れるボランティアセンター「遠野まごころネット」の生活支援チームに登録して一般支援者と2人一組で回った。

町内には仮設が2千世帯ある。当初は食糧など支援物資を届けながら、安否確認が主だ。「お変わりないですか?」。マイカーで病院への送迎なども引き受ける。何度も行くうちに、玄関先で立ち話になったり、「上がって栗ご飯食べてけ」となったり。

10月になり、衣装ケースの買い物を頼まれ届けた70代の女性は「やっとお父さんの葬式を出していいと言われた気がする」と落ち着いて打ち明けた。枕元に風が吹いて死んだ夫が告げたという。藤澤住職は位牌の準備などを地元住職に相談するよう勧めた。

だが、元気そうなのはうわべだけの人、ふさぎ込んで出てこない人もいる。妻と子供3人を津波で亡くし「一人で残っちゃった」と嘆く同世代の男性には、自分の家庭に置き換えると胸がえぐられる思いがした。「そんなことになれば誰でも、何のために生きるのかって苦しみますよね」

あらゆる希望が絶たれたと思い込む自死者、そしてその自死で家族を亡くした遺族と同じことだと感じた。

仮設団地によっても違う。デッキのある長屋形式で同じ地区の避難者が住む所では交流が盛んで、「ここがいいわ。永住したいくらい」との声を聞いたが、昼間も誰も歩いていない団地もある。「そんな所の方がほとんど。今後徐々に退出が増えると残った人が心配です」

「見捨てられる」という不安を持たせないことが第一、と支援チームは同じペースで訪問を繰り返す。週1回が2週に1回になっただけで、住民の心に影が差すこともあるのだ。藤澤住職が、悲しみの「分かち合い」が重要だと悟ったのはそんな中からだった。