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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 2(1/3ページ)

2012年7月7日付 中外日報
被災地の廃虚のあちこちには慰霊の花束が見られる。遺族の気持ちはいつまでも癒えることはない(岩手県大槌町で)
被災地の廃虚のあちこちには慰霊の花束が見られる

自死防ぐ安全網ない日本

安心して悩める社会に

東京の浄土真宗本願寺派安楽寺、藤澤克己住職(51)が言う「不条理」とは、まず毎年続いて3万人以上の自死者が出ているという衝撃的な事態だった。大学を出てIT企業でシステムエンジニアとして20年間働き、実家の寺を継ぐことになって僧侶として「何をなすべきか」を考えた時に目の前に見えた課題だ。

2006年から市民団体で自死対策の署名運動や電話相談員などを経験し、翌年には僧侶有志を募って独自の活動も始めた。例えば、手紙による相談は、「死にたいほど苦しい」人や自死遺族に思いをつづってもらい、僧侶が3人一組でじっくり対応を考え手書きで返事を出す。心ゆくまで何度でも往復書簡が続く。

全国からの相談は5年間に4千通近く、大多数が女性。深刻な悩みを非常にきちょうめんに、便箋10枚以上書いてくる人もいる。「死にたくて死ぬ人はいないのです。本当は生きたいけど、さまざまな理由でそれができないほどつらいのです。自死は決して身勝手や『悪』ではない」と藤澤住職にははっきり分かる。

だから「死んではいけない」とは書かない。相手の苦しみを全てそのまま受け入れた上で「でも私は、死んでほしくはありません」との気持ちを伝える。「恥ずかしいのですが、初めは自死を考える人を救おうと考えていました」と言い、今はひたすら彼らの悲しみを共有する住職の姿勢は、まさしく僧侶のそれだ。