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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 4(3/3ページ)

2012年7月19日付 中外日報

吉祥寺は檀家千軒を抱えるが、過去100年ほど専任住職がおらず寺檀関係が荒廃していた。兼務住職の法要での布施一律割り振りに、寺を管理する檀家がむしろ幡を押し立てて反対したり、住職後継者が追い出されたことも。無住になり、東京の寺で役僧をしていた若い高橋住職が師匠に入山を薦められた。

当初、断るつもりで「一度だけは」と訪れたが、開山堂で歴代住職の位牌を拝んでいると無性に物悲しくなった。「何とかしなくては」と気が変わった。「私でよけりゃ」。檀家は歓迎してはくれたが、「今度は何年居るんだ?」と甘くはない。荒っぽい気性の漁村で互いに挨拶しない、寺に来ては靴もそろえず法要中も私語やたばこが当たり前だった。

有力者が寺の威光で寄付集めして観光旅行することもあり、「やかましく言って、全て改善しました」。「もう辞令をもらっていたので怖くなかった」と言うが反発は激しく、晋山式の祝賀会の場で「簀巻きにして海に流してやる」と檀家にすごまれた。

だがじっと耐えて法要や葬儀をきちんとこなし、盆の集いや子供会など皆が参加する催しを次々打ち出した。さまざまな相談事にも親身に応じ、いつしか太い絆ができていた。あの檀家も今は大事な協力者だ。

だからこそ、「こんなひどい事になって」と悲嘆のふちに落ちる。600軒が被災し198人もが犠牲になった。「もっと皆さんに尽くさねば」。「寺は死んでから来る所じゃなくて生きてる間に人生を学ぶ場所だ」。師匠の言葉を「住職も一緒に学ぶ」と心に受け止めている。

(北村敏泰)