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江川会長を導師に営まれた世界平和祈願法要(大般若転読)
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 5(2/3ページ)

2012年7月21日付 中外日報

その日は快晴だった。本堂内外に並べた椅子席が350人分。午前11時から結局、遺族や檀家以外の住民、捜索に携わった消防団員、自衛隊員も合わせて1575人が参列し、境内の外まで焼香の列ができた。読経し、168人分の戒名と俗名を読み上げながら高橋住職は、またもや涙で何度も言葉に詰まった。

布施は受け取らない。役場が全壊して埋葬許可手続きが止まっていたが、交渉して前日にOKが出、何とか納骨できるめどを付けた。肉親が行方不明で「私の業のせいか」と苦悩する人には「いいえ。亡くなった姿を見せて悲しませたくないという思いやりですよ」と声を掛けた。

「百か日までに、家ごと過去帳を流された方全員の分を作り直します」と約束し、それがかなった6月17日の法要では、盆に灯籠流しをする話が持ち上がった。節目ごとに多くの遺族たちが、徐々にではあるが目に見えて落ち着きを取り戻しつつあるのが実感でき、「もっと頑張らねば」と自分を叱咤する。

「早く仏壇を新調しなくては」と悩む檀家に「復興してからね」と代わりに三尊像の紙製簡易仏壇を配り、新しい位牌の魂入れを重ねた。全国に広がった支援者のネットワークにも支えられ、子供らの坐禅会や絵描き会、指揮者の佐渡裕さんを招いたコンサートまで、人々を元気づけるさまざまな催しを開いた。「寺として一歩先の目標を示し、皆で進んでいけるように」との考えだ。

3日間続けた盆法要では逆に、「仏拝み」といって初盆世帯に全親戚が集まる地域の風習を取りやめた。香典や返しが多大な負担になる上、仮設住宅では線香さえともせないのだ。そして人々が集まる機会ごとに、仏による導きを身近な言葉で、持ち前の優しい語り口で説き続けた。