ニュース画像
門信徒大会で基調講演を行う内藤勧学
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 6(2/3ページ)

2012年7月26日付 中外日報

再建のため、第2管区海上保安本部がデザインを町民に募集中。一番高い位置にある弁財天の祠と鳥居の修復も支援が広がる。島が文字通り地元復興のシンボル。町内には「だけど僕らはくじけない」の横断幕があちこちに見える。

島は湾内の漁港に入る船の目印でもある。手前の岸では高さ3メートルの防波堤が随所でずたずたに寸断され、内側の集落が壊滅しているが、所々のプレハブ店舗には大漁旗が翻る。魚市場は昨年11月に復旧され名物の秋サケ漁に間に合った。水産業に携わる男たちがグループを作ってブランド創設の取り組みもしている。

同じく井上さんの小説「吉里吉里人」のモデルになった吉里吉里では、仕事のない漁師たちが里山に入り、間伐材を「復活の薪」としてネット販売するプロジェクトが立ち上がった。推進するのは住民のNPO法人「吉里吉里国」。多くの人々が悲しみを抱えながら前へ歩もうとしている。

役場近くに残ったビルの2階で再開した喫茶店に常連客が憩う。周囲は見渡す限り建物の残骸に囲まれ、「暗くなると怖いくらいです」とマスター。コーヒーの香りが漂う店内にビートルズの曲が静かに流れていた。「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」。長く曲がりくねった道のりだ。

夕刻になり、少し離れた旧小学校跡地の仮設商店街を訪れた。車が何台も止まり、焼き鳥や中華料理などの飲食店がにぎわいを見せる。一軒に入ると、合席の大テーブルの若者たちが酎ハイのグラスを手に歓迎してくれた。だが会話が途切れると、「死んだ人の夢見るんだぁ」「結婚してぇな。寂しくって」とぽつり。最近酒量が多くなった、とうつむいた。

午後9時を過ぎ、外は漆黒の闇に包まれていた。遠くの国道の街路灯に照らされ、廃虚に乗り入れた乗用車から初老の夫婦らしい男女が降り立つ姿がうっすら浮かび上がった。周囲には瓦礫の荒野が広がるだけ。降り出した雨に濡れたぬかるみを歩み、土台しか残っていない家の跡に来ると、頭を下げて長い間合掌した。しばらくして男性が車に戻っても動こうとしない女性。事情を尋ねる勇気はなかった。