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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 10(2/3ページ)

2012年8月9日付 中外日報

「和尚さんも、使命と思って来たっぺ?」「そうだね」。泣き顔同士で話した千葉さんと、安置所での供養をその後も続けた。だが寺にいる避難者の支援があるので毎日は来られない。知り合いの寺にも呼び掛けようと打診すると、海沿いで全伽藍を失い辛うじて生き残った寺院の住職が「流されて暇だから行くよ」と言ってくれた。

芝崎住職がたまたま行った火葬場では、全壊した別の寺の住職が無償で供養に通っているのを知った。「皆、死者と遺族に真剣に向き合おうとしている」。胸が熱くなった。

だが、被災して何も手に付かず放心状態の住職もいる。日を追って葬儀の希望が増えていたが、あまりの数に個別寺院ではとても追い付かない。一方で、ある寺が無断でよその檀家の葬儀をしてトラブルになったという情報も入った。隣山の曹洞宗石応禅寺に数カ寺が集まり、宗派を超えて協力しようとの機運が一気に高まった。

芝崎住職らは市内と隣接の大槌町を駆けずり回り、各寺院に声を掛ける。そして、3月17日に計17寺院で「釜石仏教会」が発足した。過去に何度か話が出ながら実現できなかったことだ。

「同じお釈迦様の弟子なんだから、この状況で宗派の違いなんか関係ないよね」。そもそも仙寿院も一番助けてもらったのは石応禅寺だった。そんな気持ちが共有され、芝崎住職が会長に、大槌町の曹洞宗吉祥寺の高橋英悟住職(39)が事務局長に就いた。

親睦会ではない。被災した寺を助け、宗派の違う寺でも無償で葬儀や法事を営んだ。遺体が見つかっていない場合は骨箱に遺品や家の敷地の土を納めて葬式をした。家が跡形もなく土さえ取れない人もいる。代わりに戒名や系譜を記した「血脈譜」を入れた。曹洞宗の檀家に「南無妙法蓮華経」の卒塔婆が渡されると、遺族からは「弔ってもらえてありがたい」と感謝の言葉が出た。