ニュース画像
江川会長を導師に営まれた世界平和祈願法要(大般若転読)
主な連載 過去の連載
エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 12(3/3ページ)

2012年8月23日付 中外日報

廃虚と化した旧漁市場からゴーストタウンの市街地を抜けた所にある新しい漁港は、カレイやアイナメ、毛ガニの水揚げでにぎわっていた。黄色のタイル壁が鮮やかな冷凍工場の前で、合羽を着た漁師と仲買人らの声が響く。7月には野田佳彦首相が鳴り物入りで視察に来たが、そんなこととは関係なく前向きだ。

町中にある石応禅寺の門前には仮設商店街が活況を見せる。プレハブ5棟に家具、衣類、洋食、喫茶、鮮魚、自転車や理容などの店が。テントの露店も交じり、彼岸の仏花と菓子が飛ぶように売れていた。境内の墓地では墓石を掃除し線香を供える人の姿が多い。格天井に金色の観音像が美しい納骨堂には、「3月11日没」と記した骨つぼも多く、真新しい花が添えられている。

その時、激しい揺れが襲った。堂全体がきしみ供え物が棚から落ちる。屋外に飛び出した参拝者たちが不安げに顔を見合わせた。「長げえな」。余震は1年たってもなお、たびたび人々の恐怖心をかき立てるのだ。

少し前の3月14日には午後6時9分に震度4の余震が起き、久しぶりに津波注意報が発令された。仙寿院の芝崎住職は、揺れが収まるとすぐに本堂に暖房を入れて待機した。間もなく100人以上が駆け込んで来た。顔つきは蒼白、1年前の光景がフラッシュバックして泣き崩れる女性もいた。

この1年以上全力で走り続け、時には過労で救急搬送された芝崎住職。だがまだまだ任務は山積している。地盤かさ上げや移転を含めた市復興の青写真が見えない中で、焦って再建を急ぐ人もいる。国の支援制度はそんな現場の実情に合わず、仏教会で何とか支える被災寺院に対しても公的援助は望めない。

「取りあえず片付けるという意味では前向きですが、とても復興なんてものじゃない。住民は皆さん、エゴも出さず何とか精いっぱい生きているのが実情です」。そして心配な事がある。

(北村敏泰)