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田島の風外窟を訪れ、風外慧薫の生涯を学ぶ曹洞宗禅文化の会会員ら
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 16(3/3ページ)

2012年9月1日付 中外日報

歩行困難な人と手をつないで伴走、いや一緒に歩くこと。そこでは周囲の状況を見極めないと両者とも転んでしまう。そこに吉田さんの「僧侶らしさ」がある。

「心の中に袈裟を着けていたら外には着なくてもいい」と考える。地元での一周忌法要で衣、袈裟姿を見た主婦らが「ああ、吉田さんはお坊さんだったよね」と言った。

大事なのは、まず自分自身がどう信仰を通じて生きているか。「縁の中で生かされていること」に現場で改めて気付くことが重要で、僧侶は身と行いとでそれを人々に示すべきだという。「衣を着ていると自分が愚かだとはなかなか思えないけど、ここでは愚かさに思い当たり、学ぶことがたくさんありました」

真宗僧侶として、「全ては御遠忌で親鸞聖人から頂いた宿題」と受け止め、現場では聖典を持ち歩いた。「ああ、これがそうだと思い当たり、教えが寄り添ってくれました」と語る。

津波の時はめいめいが自分の安全を第一に逃げよという「てんでんこ」。「でもそれは生き残った者への慰め。皆てんでんこに逃げていない。家族や身内を救おうとして流された人もいる」。そんな言葉を仮設住宅の住民から聞いた。

そのような複雑で深い悲しみを抱えながら孤立する人々を支える心は何か。吉田さんは「石かわらつぶてのごとき我ら」と聖人が述べる「唯信鈔文意」を引き、「要らないものは何もなく、あなたも私も輝いて生きる。だから亡くなった方の分も生き抜くことが大事なのです」と言う。

この7月1日、大槌の仮設商店街近くに念願の「手芸工房」をオープンした。異なる地域の人々が集まって手仕事をしたり作品を展示即売し、お茶も出す集いの拠点。主婦ら50人以上で開店祝いをした。「メッセージをしてもいいですか?」と最後に吉田さんはこう言った。

「全国の皆さま、ご支援ありがとう。何とか立ち上がりましたので、これから見ていてください!」

(北村敏泰)