ニュース画像
江川会長を導師に営まれた世界平和祈願法要(大般若転読)
主な連載 過去の連載
エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> いのち寄り添うリスト> 心のケア・宗教の力 6
いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 6(3/3ページ)

2012年9月25日付 中外日報

一周忌の今年3月11日、金田住職はまた南三陸町の海岸を慰霊行脚した。かつて瓦礫に埋め尽くされていた街は見違えるように片付き、道端で老女に手を合わされた。

「身内がまだ見つからなくて」。お坊さんが来ると聞いて待っていたという。その時、浜からの風が磯の香りを運んできた。夥しい遺体があった1年前は海も無機質だったが、今、三陸の海の豊かな命が感じられた。

それが人々の心の支えになるとの思いに、ふと肩の力が抜けたように楽になった。「技術や文明でどんなことをしても人間に死は訪れる。自然の大きな力で打ちひしがれ、でもそこから力を合わせて立ち上がる。そんな教えを自分のものとして生きていくのです」

「なぜこの災難を」ではなく、不条理といかに向き合うかという試練、それこそが神仏が示したものだと思い至った。

この日も一緒に行動した仙台市民教会の川上直哉牧師(38)と金田住職とは、昨年の四十九日に訪れた際、「これが神や仏のなせる業か」とさえ思わせる惨状を前に鎮魂の祈りを共にした。

川上牧師は讃美歌298番「安かれ、わが心よ」と320番「主よ御もとに」を歌った。「主イエスは ともにいます 痛みも苦しみをも 雄々しく忍び耐えよ……」。グリークラブで鍛えたバリトンが、住職の低い声の般若心経と重なった。人間世界の全てを見通す観自在菩薩の深い智慧と、大きな神の庇護。

そして2人は「神仏を語る前に人間の苦悩について深く知ろう」と言い交わした。それが超教派で被災者を支える「心の相談室」の活動の源泉でもあった。

(北村敏泰)