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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 7(3/3ページ)

2012年9月27日付 中外日報

「心のケア」を総合的に進める「相談室」の大きな柱、電話相談に川上牧師は自ら携わる。その前段には、犠牲者の弔いをした葛岡斎場での遺族の対面相談があった。

実母と孫娘と家を失った名取の被災者はひたすら悲嘆を吐き出す。石巻の人は、過疎地域で一人暮らす母が避難所にいる不安を訴えた。宗教者の存在を懸けて相手を深く受け入れねばならないと痛感した。

週2回、僧侶やキリスト者らが交代で受ける電話相談の拠点は仙台市中心部のマンション8階にある。空き家になった元鍼灸院の事務所を借りたもので、30平方メートルほどのフローリングの部屋と電話機を置いた別室が三つ、何の飾り気もない。かかってくる件数は多くはないが時間は長く、2時間以上のことも。つながらないと携帯も含めて別の電話に転送される。

「悲しみ」「苦しみ」は実際には事実に即して極めて具体的であり、「悩み」は込み入っている。子供や家族を津波で亡くした女性の訴えは、別居中で離婚寸前の夫が災害弔慰見舞金を持って行くことだった。

生活の糧の生命保険金も自分のために使ってしまう。さらに菩提寺もひどく、「供養の相談をするといきなり金の話になる」。受話器から伝わる、怒りも交じった澱のような感情をじっと受け止める。法律問題など具体策もアドバイスした。

1歳半の娘と妻が流された福島の男性がいた。自宅が全壊し、国の補助でアパートを借りたものの不動産業者とトラブルになった高齢者は、教会のネットワークで弁護士や業者組合につないだ。何かあるたびに吐いて苦しむ女性には、原因となる嫌な事の記録を取り、「自分を許すことです」と伝える。

次々押し寄せる相談者の悩み、こじれた感情を解きほぐすのは容易ではない。文字通り全力で当たるため、川上牧師は「自分の魂と体調に相談して、電話を受けるかどうか決めます」と言う。

(北村敏泰)