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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 10(2/3ページ)

2012年10月6日付 中外日報

「心のケア」には抵抗感のある人のため、宮城のハローワークでは求職者を対象に「健康診断」の血圧測定をしながら精神科医がメンタルチェックを実施。「職もなく何も手に付かない」「生きてる気がしない」などで「要注意」のサインを見極める。

だが例えば今年6月に厚労省が発表した昨年度の「心の病」労災認定統計だけを見ても、震災関連の精神疾患労災が20人にも上った。宮城の離婚問題の相談所では震災翌月から相談数が激増し、1カ月で50件と前年同期の3倍、5カ月でも同4割増となった。

福島では放射能によるストレスが甚大で、汚染度の格差による地域の分断、「移転」か「除染による残留」かの軋轢がそれに輪をかける。日蓮宗寺院の副住職は、避難先で職がないのに「賠償金で遊んで暮らしている」と白眼視される人々が「飼い殺しの無機質な毎日」に耐えかねて自死するケースを指摘した。

地元精神科医は、福島では「PTSDではなく現在進行中のCTSD(持続性心的外傷性ストレス障害)だ」と訴える。

全国青少年教化協議会臨床仏教研究所研究員として長年、地域社会や生活の場で人々の間に仏教を生かす活動をしてきた僧侶の神仁さん(51)は、震災直後から東北各地を走り回った。

炊き出しや物資配給などを続ける中で5月11日、避難所となっている宮城県石巻市の寺で「月命日」の法要を営んだ後のこと。避難者らはようやく落ち着いて見え、笑い話も出ていた。だが70代の男性がつぶやいた。「あの時私も一緒に流されていれば……」。津波で妻を亡くしたその老人の言葉は神さんの胸に突き刺さった。

「そんなこと言ってはだめです」とも「あなたは生き残ってよかった」とも言ってはいけないと分かった。言葉ではなく思いを受け止めねば。ただ深くうなずいて涙を流した。