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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 11(3/3ページ)

2012年10月11日付 中外日報

グリーフケアの前提として、悲嘆から回復に向かう過程が心理学では段階的に説明される。「精神的打撃、麻痺状態」「否認」「パニック」そして「怒りと不当感」「敵意と恨み」が表出し、「孤独、抑うつ」「無関心」「諦め、受容」を経て「新たな希望、立ち直り」に至る。

アルフォンス・デーケン・上智大名誉教授によるこの分析を神さんは引き、「怒鳴り込んで来られただけ、まだいいのです」。その剣幕に、スタッフの僧侶の一人が男性を部屋の奥に招き入れて向き合い、じっくり話を聞いた。男性は会の最後まで一緒に過ごした。

「皆さんが投げたボールを受け止めることによって、感情が平坦になるのを目指すのです」。素直に言えない人、感情を出せない人もいる。「安心して言ってもらい、吐き出してもらうことが大事です」と神さんは強調する。

だが実際には困難な問題が多い。「悪い霊が、業が」と訴える人への対応で困ったこともあり、神さんたちのグループは、カトリックのシスターである高木慶子・上智大グリーフケア研究所長らを講師に招いて研修会を重ねた。

高木所長は、悲嘆の原因となる「喪失体験」について「愛する家族や友人との死別、別離」「財産、仕事などの喪失」「地域社会など環境の喪失」「自尊心の喪失」といったものを挙げる。そのような、一人一人異なる喪失体験にきめ細かく対応し、それを癒やすよう寄り添うのは簡単なことではない。

昨年4月、福島の漁村の避難所で気丈にリーダーを務める70代の区長の男性に会った。「ご家族は無事でしたか?」と神さんが思わず尋ねると、「いや。女房も死んだ。娘も上がんない」。衝撃を受けた。「頭では先入観を持ってはいけないと思っても、現場では……」

では家族を亡くした人にどう接するか、悩み続けた。そして「その方の命と亡くなった方の関係性をどう再構築するか。あの世というか、見えない命、霊とどうつないで差し上げるか、それが任務だ」と思い至った。

(北村敏泰)