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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 13(3/3ページ)

2012年10月16日付 中外日報

現地ではまず「単独での心のケアはあり得ない」と感じた。医療や物資などの生活支援は最重要であり、例えば百カ日のころには喪服が求められた。「そうした具体的な活動に伴うやりとりの中で、被災者から語られる言葉に耳を傾けることです」

そんな中で支援者と被災者の間に関係性が育まれ、親しくなって魚や野菜などをもらうこともある。「全てを失いながらも何かを与え分かち合うことに喜びを見いだす人間の本質」を大切にし、心を込めて受け取ることも大事な支援の一環だという。

他方で、支援者があまりの惨状に衝撃を受け、無力感や後悔、罪悪感にさいなまれる「惨事ストレス」は、専門職にとっても相当な負担になる。無自覚だった「上から目線」が逆に自らに対する裁きとなって返ってくることも。だから活動後は仲間同士の「分かち合い」「振り返り」などの支え合いが必要になる。

また場合により矛先が支援者に向けられることもある被災者の「怒り」は、悲嘆プロセスでの正常な反応である一方、立ち直れない思いや、「あの人に比べたらまだ私はまし」という悲劇の「比較」で素直に語れない人も多い。「泣いても、怒ってもいいんだよ、という環境を工夫することが重要です」

そして井上准教授は、PTSDの治療とグリーフケアの区別を明確にし、「全ての物事の変化を受け入れることができる統合的自我機能が回復して初めて、喪失の痛みに耐えながら悲しむことができるようになる」と語る。

「悲しみは完全になくなるものではない。亡くなった人との関係性が再構築され、泣き笑いしながら想い出を語れるようになって、悲しみを抱えて生きていけるようになるのです」

(北村敏泰)