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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 16(2/3ページ)

2012年10月25日付 中外日報

精神的苦痛を訴えて受診する大人の患者が激増した4月半ば以降、しばらくすると子供の不眠や夜泣き、暴力などの訴えが急に増えた。そして半年が過ぎるころから、それまで気丈に耐えていた中年や若い世代が限界を超えて診察に来た。「日頃は弱音を吐かない人たちなので、心に高いバリアーがあるのです。まずは『泣いてもいいんですよ』と伝えます」

一緒に泣いてしまうこともある。「医者失格」と言われてもそれでいいと思っている。桑山医師はそんな中で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状がある人が1割はいる、と感じた。涙が出る、血圧が上がるなど自律神経失調、悪夢にうなされる、午後の津波の時刻になると外出できないなどの「記念日反応」も見られた。

その治療には「メンタルな部分を治さないと駄目です」。それが「物語を語る」ということだ。通常は時間の順に並んでいる記憶が、命の危機や衝撃的な出来事に遭うとバラバラになり、一部が欠落したり順序が入れ替わったりする。

「つらい記憶に無意識にふたをして心の奥に押し込めるのです」。それを思い出して語ることによって、記憶を「修復」して物語として完成させ、それから解放されるようにするのだ。

「忘れる」ことではなく、その「語り」を引き出す。つまり「聴く」ことが「心のケア」で、それが任務だと桑山医師は言う。閖上の5年生の女児まいちゃん(11)は、避難していた学校の屋上から人々が流されるのを見、その中に親しい友達もいた。桑山医師が「誰かに話したの?」と聞くと「大人が気を使って聞いてくれない」と言う。

その友達の葬式に行って泣き、医師に全てを打ち明けたことでやっと安心し、腹痛など体の不調も治まった。

被災地各地での子供たちの「心の傷」の表れ方はさまざまだ。中学校ではインターネットで津波の映像を見て「これは僕の家かな」と説明する男子生徒がおり、遺体を目撃した時のことを進んで話す子もいたという。