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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 19(2/3ページ)

2012年11月1日付 中外日報

ライフラインが壊滅する中、もともと湧き水とプロパンガスを使っていた寺で、炊き出しやボランティアの宿泊基地としての後方支援を開始した。宗門僧侶や縁のあるキリスト教関係のグループ、医療関係者が次々訪れ、半年間も活動拠点であり続ける。

瓦礫撤去活動中に仏像が出てきたり、被災者から「夫が亡くなった場所を拝んでほしい」と請われ、僧侶たちは作業服の上に改良法服と袈裟を着けて読経した。惨状に打ちひしがれた被災者の様子を見て、本山に「心のケアができる人を」と高野山足湯隊の派遣を要請した。「宗教の力」を実感する日々だった。

盆が近い頃のことだ。「亡くなった○○さんが街を歩いていた」「海の上に人がいた」。「夜にあそこのコンビニに行くな。死者のたまり場だ」といった「幽霊」の話を、森脇さんは地元の人からたくさん聞いた。「悲惨な死に直面し、生き残った方々がそんな思いをするのは当然のことです」。この3月、森脇さんはそう振り返った。

被災地では各地で「幽霊談」が聞かれた。「流された父が夜中に帰ってきてドアをたたいた」。身近な人の突然の死を受け入れられない人の「幽霊でもいいから会いたい」という悲痛な声も。

森脇さんが挙げた、釜石でも犠牲者が集中した鵜住居地区に、その日の深夜に赴いた。漆黒の闇に沈む一面の廃虚に人通りは全くない。街灯も消え、目を凝らしても家々の残骸が黒い塊のようだ。たたずんだまま、死者の声を聞こうとじっと耳を澄ます。空気が濃縮されて重く、その場に漂う人々の悲嘆がうなりのように聞こえた気がしたが、かすかな波音や風の音に紛れてしまう。

ふと、何かが闇に白っぽく浮き上がりどきりとした。遠くを走る車のライトが家の残骸に反射していた。肌に染みる寒気の中で1時間余り、宙にさまよう何かの「気配」を感じることだけはできた気がした。