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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 19(3/3ページ)

2012年11月1日付 中外日報

「心の相談室」で被災者の傾聴を続ける曹洞宗の金田諦應住職(55)は、「幽霊」について「実在するかどうかではなく、皆さんが見ているのは事実です。心構えのないまま家族を突然に亡くした、その死を受け入れられるまで宗教者が寄り添っていくしかないのです」と言う。

震災一周忌に立正大で開かれたシンポジウムで、宗教学者の正木晃氏は「宗教の原点は死者供養。近代の仏教学は『祈りの力』を非科学的として排除してきたが、幽霊談のような問題に対応するには、霊魂論を再考し『生活仏教』を見直す必要がある」と強調した。

グリーフケア研究者で葬儀会社も運営する一条真也氏は「故人への思い、無念さが幽霊をつくり出している。怪談は物語の力で死者の霊を慰め、死別の悲しみを癒す一種のグリーフケアで、葬儀と同じ機能を持っています」と語る。

幽霊を見たと話す人たちに、森脇さんは全日本仏教会から送られてきた腕輪念珠を「お守りに」と配った。300連がすぐになくなり、サバイバーズ・ギルト(生存者の苦悩)に宗教者として対応するのが大事だと痛感した。「悲しみを吐き出してもらおう」と毎月命日の11日に、寺で「お茶飲み会」を始めた。

各地の支援者が寄せてくれる菓子なども用意したが、打ちひしがれた人々の足は重い。そんな時、住職が津波犠牲者供養の観音像建立を発願したのがきっかけで、森脇さんは「不空羂索観音」を造ることにした。投網を手にした姿の像。

地元では嵐で海がしけると、「沈んでいる遺体が揚がってくる」と歓迎する人たちがいると聞いた。「観音様に救ってもらい、仮に遺体が見つからなくても投網で亡くなった方の魂を救うことができる」。そんな願いを込めた。

(北村敏泰)