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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 20(3/3ページ)

2012年11月3日付 中外日報

岩手、宮城の被災地域の看護師の調査でも、3割にPTSDが疑われ、7割に不安や鬱が見られたという。これに対して例えば、高野山真言宗僧侶のスピリチュアルケアワーカーが医療・福祉関係の支援者を対象にしたセミナーを開き、瞑想などを指導している。

だが、被災地で踏ん張る地元の宗教者自身も多大なストレスを抱える。例えば、今年4月に開かれた浄土宗の災害救援対策推進会議では、岩手教区から「住職や寺族への心のケアを、専門家を派遣し、長期にわたってしてほしい」と悲痛な要望が上がった。

またある町では、本堂を津波で流されながらも檀家や住民と励まし合い、助け合って避難生活を続けた寺の住職が自死した。四十九日法要では遺族や被災者を「犠牲となった人たちの分まで生きましょう」と励まし、その後も数多い葬儀や供養を執り行ったが、その冬に姿を消し、変わり果てた姿となった。

この住職と親しかった別の住職は、その後も檀家と共に復興に取り組んでいるが、「被災した宗教者へのケアがない。宗教者を助けてくれる人がいない」と訴える。津波が来た場所に住む精神的な不安も手伝って動揺が激しく、目が見えにくいなど感覚が鈍って、精神安定剤を飲み続けているという。

この事態を現地で聞いた大阪大大学院の稲場圭信・准教授は「宗教者による支援の情報が共有され連携の輪も広がった一方で、被災地で取り残され苦悩している宗教者もいる」と語る。

支援者やボランティアへのケアについて、「できなかったことを悔やむより、できたことを積極評価する」などの留意点を専門家は指摘する。キリスト者のグループでは祈りによる苦悩の分かち合いが見られ、ある僧侶は「苦しい時は心の中の阿弥陀さまに聞いてもらいます」と打ち明けた。

人々を支える宗教者たちにとって、その信仰と宗教はどのような力として働くのだろうか。

(北村敏泰)