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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

つながり、そして明日へ 6(2/3ページ)

2012年12月11日付 中外日報

巳代子さんはある時、竹内さんにブレスレットを贈った。深緑のタイガーアイの石。「見ず知らずなのに尽くしてくれる人にお守りにと思って」。実は竹内さんはその日、一般ボランティアの激減に腹を立て、腕を強く振った拍子にそれまで大事に着けていた数珠の腕輪が切れ飛んだ。巳代子さんからもらったのはこの1時間後。手を握られながら体が震えた。「不平を言った自分への神様のお諌めと、少人数でもさせてやるという計らいのお印だ」と。

少し離れた路地奥の家は、階下が破壊され2階で一家が生活している。漁師の夫(62)はあの時、4歳の孫を抱いて逃げた。助かっても孫はショックで夜泣きが続き、よそへ移った。長男は漁業を辞めて瓦礫撤去の仕事に就く。「700年前のご先祖からこの土地に住んどるが、これからどうなるのか……。親戚、友達いっぺえ死んだっち」

ある時、家族がけがをするなど「不吉なこと」が続き長女Sさん(33)が竹内さんに「お祓いはできるんですか」と相談した。宗教的な依頼は初めてだった。家を調べた竹内さんは「亡くなった方がこの部屋にいたと分かります」と引き受けた。当時、犠牲になった親戚の遺体が泥だらけの座敷に安置されていた。

竹内さんら隊員は正式な白装束で、仮設の祭壇に玉串や「天地書附」を掲げて「霊祭り」を斎行した。「何だか体が軽く、家の中も明るくなった」と、長女は炊き出し活動にも参加した。祭典が「心のケア」になっていた。夫は「こんな所まで、一番早くからずっと来てくれた。宗教ってすごいよ」と語る。

次の村でも訪問する先々で声が掛かる。夫を亡くしながら自宅を改修して一人暮らしする老女は、笑顔で「魚持ってけ」。女性隊員は玄関先で主婦と洗濯物を畳みながら話が弾む。流されて九死に一生を得たという男性(74)は、竹内さんが「隊としての訪問は最終です。ありがとうございました」と伝えると見る見る目を潤ませた。

「寂しくなるのう」。知人の断末魔の声が耳に残っていると苦しみ、体調を崩して入院した際、「もう駄目だと諦めたが、あんたらのこと思い出して頑張ったんだ」と号泣して訴えていた。「いえ、個人ででもまた来ますよ。必ず」。竹内さんは固く約束した。