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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

つながり、そして明日へ 完結(5/5ページ)

2013年1月1日付 中外日報
光慶寺の境内に掲げられた仏旗。地震で損壊した本堂は屋根に覆いが掛かったままだが、白江住職と門徒とのつながりは深い(福島県南相馬市で)
光慶寺の境内に掲げられた仏旗

つながりこそが未来への力だ

前年、同年と夏に「キッズオーケストラ」を率いて寺へコンサートに来てくれた指揮者の佐渡裕さんに「子供らに好きなことを一生懸命やらせてやりたい」と話すと、バイオリン10丁を佐渡さんらが集めて寄贈してくれた。小中学生15人で「くらぶ海音」が立ち上がり寺で練習が始まる。初心者のノコギリのような音に檀家も苦笑したが、皆の顔が輝いた。慰霊の日には「キラキラ星」を合奏したいと願う。

そして高橋住職は、町民の希望のシンボルになっている大槌湾の「ひょうたん島」にちなみ「ひょっこりひょうたん島」のテーマソングを歌う会の計画を進めている。

「だけどぼくらはくじけない 泣くのはいやだ笑っちゃおう」。「5年後、10年後には町民みんなでオペラにもできればと思います」。この2年近く住民に寄り添い、苦難や悲嘆に遭っては涙を流し続けた住職の目に希望の光が宿った。

城山からは澄んだ空気を透して彼方の波間に浮かぶひょうたん島が望めた。昨年末、明るい町の未来の時を象徴する、太陽と砂時計をイメージした灯台が再建された。

3度目の冬のフクシマ。堀内さんの「ただ運ぶのではなく人から人へとつないでいくことに意義がある」との助言で昨年、真言宗の若い僧侶たちによってリレーされた「灯り」が南相馬市にもともる。原発事故で1年以上も立ち入り禁止にされ時間が止まったままだった小高地区は、新年を迎え住民らが帰還準備に入る。

光慶寺の白江順昭住職は昨年5月、津波に洗われた地区で瓦礫の上にこいのぼりが泳いでいるのを見つけた。端午の節句が過ぎても揚がっている。住民の「復興するぞ!」の叫びと分かった。

すぐに片付け中の自坊に走って戻り、境内のポールに大きな「仏旗」を掲げた。赤、白、青など鮮やかな5色、世界共通の仏教徒の象徴だ。するすると12メートルの頂上に達し、浜風をはらんで勢いよく翻った。「お寺も頑張っているよ!」。思わず大声が出、旗を仰ぐ笑顔の頬を熱いものが伝った。

町内は子供らを中心に人口が激減し将来が見えない。「若い世代のためにこそ復興に力を入れるのに、娘さんが『もう結婚できない』と嘆く。原発は人類の罪です。こんな状況へのささやかな抵抗でもあります」

だが住職の決意の印でもある旗を遠くから見つけ、檀家が訪ねてくるようになった。「和尚もいるんじゃね。ならわしらも」。つながりこそ、未来への力だと信じた。年が明け、青空に溶け込む仏旗は人々の希望を乗せてはためき続ける。いつまでも、いつまでも。

(北村敏泰)

連載完結しました。