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生活再建、展望見えず 東日本大震災6年(1/2ページ)

2017年3月8日付 中外日報(時事展描)

東日本大震災の原発事故から間もなく6年。避難地域となった東京電力福島第1原子力発電所の周辺自治体のうち3月末に福島県川俣町、浪江町、飯舘村、4月1日に富岡町で放射線量が高い帰還困難区域を除く地域の避難指示が解除される。しかし、生活再建や健康被害への懸念から帰還を望む住民は少なく、被災寺院住職らの表情は今なお暗い。(池田圭)

故郷なくなる感覚 浄土宗浄林寺

原子力発電を紹介する富岡町の旧「エネルギー館」。今後「廃炉館」にリニューアルされるとのうわさもあるという
原子力発電を紹介する富岡町の旧「エネルギー館」。今後「廃炉館」にリニューアルされるとのうわさもあるという

原発から約11キロ、富岡町下郡山・浄土宗浄林寺の早川光明住職(66)は1~2月に開かれた避難指示解除に関する住民説明会に出席しなかった。

「解除ありきの形だけの説明会。多くの住民は『解除は生活環境が整ってから』と考えているが、政府は住民の意見に聞く耳など持たない」。昨年12月に同寺が所在する行政区の約80世帯と「解除は時期尚早」との請願書をまとめ、町議会に提出している。

浄林寺の境内は除染を終えているが、放射線量は国が定める除染目標値の約2倍の毎時0・4~0・5マイクロシーベルト。近所には除染が手付かずのままの山林もあり、不安は尽きない。

避難生活を送る町民約1万5千人のうち、「戻りたいと考えている」のは16%。このうち「解除後すぐに戻りたい」のは36%にすぎない(復興庁の住民意向調査、昨年10月)。早川住職によると、帰還を望む住民の大半は高齢者だ。

富岡町がある浜通り地方を南北に通る国道6号は今、全国各地のナンバープレートを付けたダンプカーが列を成して行き来し、毎日混雑している。福島県双葉・大熊の両町に建設予定の、汚染土を保管する中間貯蔵施設の整備など諸般の作業のためだ。

同県いわき市で避難生活を送る早川住職は週に2、3度、ダンプの車列に交じって車で浄林寺に通い、墓参などに合わせた檀信徒の法事に対応している。

「一応は使用できる」伽藍は地震によるゆがみや壁の剥落など震災当時の姿のまま。避難指示の解除後も町に戻る見通しは立たず、茨城県北茨城市の親族の寺に預けている檀家の遺骨を浄林寺に戻す以外は、生活はほとんどこれまでと変わらない。

「誰も解除後の生活再建や町の復興は見通せない」と早川住職。「寺やお墓、ご先祖様のことは最終的な拠り所。それだけは守っていきましょう」。将来の不安を口にする檀家をそう励ますが、「故郷という、我々の“いのちを育んできたもの”がなくなっていく感覚は否めない」と打ち明ける。