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第88回 1、江戸の人情 うどんは百年値上げなし

落語・劇作家さとう裕

2012.06.19~2012.07.24

  • 1、江戸の人情うどんは百年値上げなし
  • 3、縦の笑い不条理な世をこけにする
  • 2、群集のパワー伊勢詣りで不満を発散
  • 4、上方と江戸笑いの文化的風土に違い

随分前から江戸時代にはまってまして、これが面白い。時代劇とは、また違った庶民の生活や為政者の考え方がほの見えて、目からうろこ。ある日、落語の「時うどん」を聞いていて、おやっ?と思った。

喜六と清八、二人の男、腹が減ったのでうどんでも食べようと。が、二人合わせて15文しかない。うどんは16文。清八は俺に任せておけと言い、二人で一杯のうどんを食べる。

さて、支払いの段になって、清八「ひい、ふう、みい、よう」と、銭をうどん屋の手に。八つまで数えて、「うどん屋、今何時や」。うどん屋が「へえ、九つ(午前0時)で」、聞いた清八、「とお、十一、十二……」、1文ごまかしてしまう。

うまいことやりよったなあ、と喜六が翌日、同じ時刻に行けばいいものを、早く出かけて、「ひい、ふう、みい……八つ。今何時や」「へえ、五つでおます」「六つ、七つ……、3文損しよった」

東京では「時そば」。有名な噺で、ご存じの向きも多いでしょうが、なんでいつも16文なん?江戸時代は264年ある。これ、いったいいつ頃の噺?

調べてみるとびっくり。江戸時代、素うどん(掛けそば)の値段は約百年、16文で変わらない。米なんか、毎年値段が上がったり下がったり、でも、うどんは庶民の食べ物として、幕府が値上げを許さなかった。

天保の改革の頃(1830~)、江戸で蕎麦屋が連署して値上げを申請してるんです。これが却下された文書が残ってます。値上げはいかんが、「蒸籠を上げ底にしても苦しからず」とお触れが出た。で、盛りそばがうまれたというこぼれ話も。

また、江戸は火事が多く、夜の商いは制限が多かったんですが、人気のそば売りなどはお目こぼしされた。昼の商いも、50歳以上か15歳以下、さらに身体障害者等は特別扱い、守られたんです。

意外に、弱者に優しい政策をとってたんですよ。落語からほの見える江戸の人情。これって、いいでしょ。