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第90回 1、神仏の領域 犯してはならない「種」

全国青少年教化協議会主幹 臨床仏教研究所上席研究員神 仁

2012.09.11~2012.10.16

  • 1、神仏の領域 犯してはならない「種」
  • 3、いじめ 自他に息づく仏の世界
  • 2、グリーフケア 失ったいのちとつながる
  • 4、仏法共同体 「分かち合い」の国づくり

南方仏教に伝わっている、人が犯してはならない五つの教えの中の一つに、「ヴィージャ・ニヤマ」というものがある。ヴィージャとは、サンスクリット語で「種」を意味する。仏になる種、すなわち「仏種」などという際の「種」のことである。また、ヴィージャは「精子」なども意味する。つまり生命や物質の根源的な要素を指す言葉であり、人はこのヴィージャを恣意的に操作してはならないという教えが「ヴィージャ・ニヤマ」である。

今日的にいえば「原子」や「原子核」もこのヴィージャという概念に含まれる。その意味で原子力発電は、人が原子の核分裂反応を無理矢理引き起こし電気を生産するものであり、この仏教の伝統的な教えに反することになる。各地で広がりを見せている原発廃止運動は、仏の教えに基づいた、宗教者として、特に仏教者として当然の行動と言えよう。

しかしここで考えたいのは、私たちはいま、原子や原子核以外のヴィージャにも目を向けるべきではないかということだ。それは、今日当たり前のように行われている生物学的なヴィージャの操作である。このことは、放射線の影響が長期的にどのように人体に影響するのかについて、未だ研究が不充分な状況と通底している。

たとえば、遺伝子改良技術の発達により、多品種高品質な食物を安価に私たちは手に入れることができるようになった。しかし、遺伝子操作をされた食べ物が、私たちの人体、特に子どもたちの身体や精神にどのような影響を及ぼすかについては、未だ充分な実証的研究がなされていない。

また、人間を対象とした遺伝子操作による生殖技術の発達も、基本的に同様の問題をはらんでいる。iPS細胞の発見と技術の発達により、人の手によって臓器がつくり出され、安易に売り買いされてしまうことも、今後大きな問題となってくるだろう。

原発廃止運動にとどまらず、これら神仏の領域への人間の関与について、私たち宗教者は、今こそ明確な答えを出すべきなのではないだろうか。