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時流ワイド

裁判員制度を"裁く"(2/4ページ)

2012年9月4日付 中外日報

裁判員制度"開廷"から3年 問われている宗教者の対応

施行から3年を迎えた裁判員制度。「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(以下、裁判員法)の規定に従い、法改正を含めた運用状況の検討が始まった。制度導入前は国民の司法参加に対する疑問や拒絶反応が強調されたが、施行後はおおむね順調に運用されているとの見方が強い。ただ、日本弁護士連合会からは裁判員の心理的負担軽減策や守秘義務の緩和などを提言する意見もある。裁判員候補者にいつ選ばれるとも限らない。宗教者の対応も問われている。(池田圭、有吉英治)

現状ほぼ全員が「よい経験」と

裁判員制度年表

最高裁判所の統計によると、制度が始まった平成21年5月から今年4月末までに裁判員候補者に選定されたのは約32万1400人。このうち重い疾病・傷害や同居親族の介護など裁判員法が定める辞退事由に基づいて辞退が認められたのは18万3200人ほどで、実際に裁判員を務めたのは約2万8700人(補充員を含む)だった。

宗教界では一般市民が同じ市民を裁くことへの疑問などが強調されているが、最高裁のアンケートでは裁判員経験者の95・5%が「非常によい経験と感じた」「よい経験と感じた」と回答している。

この間に行われた裁判員裁判は約3700件あり、主な量刑では死刑14件、無期懲役76件、無罪17件。ほぼ同時期に行われた裁判員裁判(制度施行~今年3月末)と、プロの裁判官による裁判官裁判(平成20年4月~今年3月末)の量刑分布比較では死刑に関して極端な増減はないが、性犯罪や傷害致死事件で裁判員裁判の方が量刑が重くなる傾向がある(最高裁公表資料、今年5月)。

法務省によると、制度運用の検討は同省が設置する「裁判員制度に関する検討会」(平成21年9月9日に第1回)での審議が中心になる。

現状は論点整理の段階だが、制度施行満3年の今年5月21日後に開かれた6月1日の第10回検討会では▽裁判員経験者のほぼ全てが「よい経験をした」と考えている。施行前の危惧は杞憂に終わった▽供述調書中心の裁判が公判中心の裁判に変わり、傍聴席にいて法廷を見聞きするだけで、審理内容や争点が分かるようになった▽無罪判決の内容などを見ると、推定無罪という刑事裁判の原則が、より忠実な形で反映されていると思われる――などの意見があった。

他方、日本弁護士連合会は制度施行3年を踏まえ、六つの意見書などからなる「裁判員法施行3年後の検証を踏まえた裁判員裁判に関する改革提案について」を今年3月22日付で法務大臣に提出。▽裁判員の心理的負担軽減措置に関する規定の新設▽死刑の評決要件の見直し(死刑の量刑判断には合議体の全員一致を要件とする)▽守秘義務違反の罰則対象範囲を限定するとともに、裁判員制度の運用に関する調査研究を目的に守秘義務適用除外規定を新設――などを提言している。

裁判員制度への宗教界の関心の一つは、信仰上の理由による裁判員の拒否をめぐる問題だ。法律上は辞退事由を定めた政令に「自己又は第三者に身体上、精神上又は経済上の重大な不利益が生ずると認めるに足りる相当の理由があること」との条項がある。

裁判員経験者や弁護士有志らでつくる裁判員経験者ネットワーク(東京都)の世話人の一人、大城聡弁護士によると、同条項にある「精神上」の文言は裁判員法制定時に良心的拒否への配慮から盛り込まれた。「それに基づいて拒否を申請できるし、拒否したい人はそうするべきだ。裁判員は強制的に務めるべきものではない」と説明する。

裁判員候補者のうち、半数以上が辞退を認められており、大城弁護士は「個人的には裁判所はかなり柔軟に辞退を認めていると思っている。候補者の不出頭などに対する過料も今のところ一件も公表されていない。思想や信仰上の理由で辞退が認められた総数は分からないが、そうした運用の中で実質的に良心的拒否も認められていると考える」と話した。

制度運用の課題については、情報公開の在り方を指摘。「守秘義務により裁判員の経験が市民に十分共有されていない。守秘義務の条件を緩和することで、公的な場で議論できる機会を増やすようにするべきだ」と強調した。