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時流ワイド

裁判員制度を"裁く"(4/4ページ)

2012年9月4日付 中外日報

体験市民として成熟する機会

この3年間で実際に裁判員を務めた宗教者の事例はほとんど明らかになっていないが、平成21年9月に青森地裁で審理された強盗強姦事件で裁判員を務めた、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団青森キリスト教会の澁谷友光牧師(48)に話を聞くことができた。

澁谷牧師によると、同教団では裁判員を務めるか否かは個人の判断に委ねられている。裁判員を務めると決めたのは「キリスト教では『人を裁くな』と強調するが、私としてはキリスト教信仰に立つ一国民として、教えに基づいて意見を述べることがかえって大切と考えた」からという。

審理では被害者の苦しみと、被告の恵まれない生い立ちを知り、板挟みになった。「人を裁くのはとても寂しいことだった」

裁判は性犯罪を裁いた初の裁判員裁判で、被害女性がビデオリンク方式(証人を法廷外の場所に召喚し、映像と音声で尋問する方法)で犯行の様子を生々しく証言。激しい衝撃を受けた。

一方、被告の青年は早くに両親が離婚。引き取った母親とは小学1年の時に死別していた。「実は私も彼と似たような生い立ちがある。私はイエスと出会って生まれ変わることができたが、もし出会っていなければと思うと彼への思いが込み上げてきた」と振り返る。

判決は求刑通りの懲役15年。判決の言い渡しに際しては裁判長に「この15年はあなたの更生を諦めたものではない。更生を信じる期待の15年だ」と被告に伝えるよう求め、裁判長は主文の後にそれを付け加えた。

ただ、懲役15年の量刑は「思ったよりも短いと感じた。審理では裁判官裁判による過去の量刑資料を見たが、それも想像以上に短いと思った。被害者の痛みが十分反映されているのか」と話す。

澁谷牧師は裁判員制度には賛成の立場。「地域での普段の生活では"きれいな部分"しか見えないが、実際にはその裏にさまざまな問題がある。犯罪は地域が抱える問題を映す鏡。その現実から目をそらさず、本当の意味で地域を知ることが大切だ。裁判員制度はそれを知り、市民として成熟する機会になると思う」と語った。

澁谷牧師は裁判後、家庭問題に悩む人を支援するNPOを立ち上げ、活動に励んでいる。