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トップ> 時流ワイドリスト> 松本サリン事件から18年 直聞インタビュー 河野義行さん
時流ワイド

松本サリン事件から18年
    直聞インタビュー 河野義行さん(2/5ページ)

2012年11月3日付 中外日報

オウムの犯した罪と赦しとは何なのか

松本サリン事件の被害者でありながら、警察とマスメディアに犯人扱いされた河野義行さん(62)。サリン中毒の後遺症で意識不明だった妻・澄子さんの看取りを経て、今は南国・鹿児島で穏やかに暮らす。事件に関わった元信者に身内のように接し、松本智津夫死刑囚を「麻原さん」と呼び、「恨んでいない」と言い切る。河野さんにとって、オウム真理教の犯した罪と赦しとは何なのか。現実を明らかに見るその姿勢は幾度も死線をさまよった体験が培い、有限の人生を楽しく生きようという思想につながる。「心の持ちようで人生はプラスに転化する」「足るを知り、何も持たない方が楽」。信仰はないといいながら、言葉の端々に仏の教えが香り立つ。(佐藤孝雄)

報道は推定無罪の原則を

「恨んだり憎んだりするより楽しく生きたい」と話す河野義行さん

松本サリン事件 1994年6月27日、長野県松本市の住宅街で神経ガスのサリンが散布され、住民8人が死亡、約600人が重軽傷を負った。現場近くに住む第1通報者で当時会社員の河野義行さんが疑われたが、逮捕に至る前にオウム真理教の犯行だったことが判明。教団松本支部の開設に絡む反対派住民による民事訴訟を有利に進めるため、裁判官らを殺害するのが目的だったとされる。警察の見込み捜査とリーク情報をうのみにしたマスメディアが相互補完的にえん罪未遂を犯したといえ、えん罪の構造やメディア・リテラシー(情報を見抜く能力)について国民が考える機会になった。

オウム真理教事件の一連の捜査が終結しました。どう評価しますか。

当局は諦めず、粘り強く捜査を展開したと思います。十何年もたてば手掛かりもないような状況になってくる。そういう中で、世間が関心を示すように、等身大の人形を作ったり、常に手配犯がまだいるんだということをアピールしてきた。民間からの情報も得られた。

河野さんを犯人扱いした反省も。

警察は当時、してはいけない捜査を三点やった。

一点は医師の診断書を無視した長時間の事情聴取。それから当時高校1年生の長男に対して「切り違い尋問」という手法を使って、私は言ってもいないのに、親父はもう罪を認めて吐いているんだと迫ったこと。あと一つは自白の強要です。

えん罪を作り出す構造的な問題とは。

警察が容疑者を絞り込む過程でマスコミにリークして、その人が怪しいというような像を作っていく。マスコミで流されると大勢の人が知る。罪を犯した人は裁判所によって相応の罰が科されるのが原則ですが、実際には逮捕もされないうちに世の中から排除され、たたかれるという、おかしなことが起こっている。そういうものが絡み合いながら一つの犯人像が出来上がっていく。

もう一つは裁判官の問題。検察側の意向を無視できないような、本来なら独立した自由心証で裁くべきものが実際にはそうなっていない。検察がクロだと言ったことをシロだと言うことがプラスにならない。検察が裁判官に圧力をかけているような変な状態になっています。

えん罪防止のために必要なことは。

あったことをあったまま警察が書類に上げるということが一つ。それと、力でねじ伏せるような取り調べをしたらいけないということ。

あとは報道。推定無罪の基本に立っているか、速報性に偏っていないかどうか。今、逮捕報道が相変わらずピークです。容疑者逮捕で事件が片付いてよかったみたいな住民のコメントを載せて終わっているけれど、本当は逮捕、起訴して始まり。何が事実かというのは法廷報道にシフトしないと見えてこない。