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時流ワイド

自死と向き合う宗教者(2/6ページ)

2012年11月22日付 中外日報

自死を防ぐ 宗教者が果たせる役割とは

平成10年以降、14年連続して自死者数が3万人を超えている。8月には自殺対策の指針となる「自殺総合対策大綱」が決定され、総数は年々減ってはきているものの、それでも多くの人たちが自ら命を絶つ現状に変わりはない。自死予防に取り組んでいるさまざまな民間団体や個人の中には積極的に参加している宗教者の姿も見られる。宗教者は自死の現場で何を思い、活動しているのか。(山縣淳・山本雅之)

プライバシーに配慮するため相談者の電話に応じるのは仕切られたスペースだ(自死予防に取り組む団体の事務所で)
プライバシーに配慮するため相談者の電話に応じるのは仕切られたスペースだ(自死予防に取り組む団体の事務所で)

孤独の闇に誘い込まれる

NPO法人大阪自殺防止センター理事で大阪府寝屋川市の融通念仏宗大念寺副住職の関本和弘さん(36)はセンターに寄せられた一本の電話が心に残っている。

深夜2時ごろに電話してきたのは、50歳前後と思われる男性。会話が進むうちに、仕事上の人間関係で悩んでいることなど、ぽつりぽつりと本音が漏れてきた。

しばらく傾聴を続けると、男性が静かに言った。「誰にも話していないけど、あんたになら」。そう言うと男性は、「この電話を置いたら死のうと思っている」と告白した。

そして、男性は語り始めた。周りからは責め立てられ、誰一人味方がいない職場。友人はいても、話せない本音。頼る家族もいない。男性の発する言葉の端々から、不安や恐れ、孤独の感情が伝わってきた。「どうしようもない」との男性のつぶやきに、「それだけのものを一人で抱えているのはつらかったですね」と関本さんは静かに応えた。やがて、受話器の向こうから男性の泣き声が響いてきた。

最後に、男性は言った。「誰かに分かってほしかった。もう一週間、頑張って生きてみる」。関本さんは「その言葉を信じています。一週間後に声を聞かせてください」と言って受話器を置いた。40分間の出来事だったが、関本さんの心に深く焼き付いている。

この自殺防止センターを大阪に設立したのは西原由記子さん(79)。昭和53年に夫の故西原明牧師とセンターを立ち上げた。司牧する教会に通っていた青年が電話をかけてきたその日に自死してしまったことがきっかけだった。青年が長年そううつ病に苦しんでいたことも知らず、表面的な付き合いしかできていなかったのではないか。彼の最後の言葉「皆さんによろしく」が「さよなら」を意味する自死のサインと気付かなかった。青年の死を無にしたくないと、西原夫妻は自死防止活動に携わる決意を固めた。

平成10年には上京し、東京自殺防止センターを設立して首都圏での活動を開始。くしくもその年、日本の年間自死者数が3万人を超えた。

東京都新宿区大久保の日本基督教団シロアム教会内のセンターでは電話相談は火曜は夕方5時、その他の曜日は夜8時から朝6時まで受け付ける。この時間設定は行政などの相談窓口が閉まってしまう時間帯の受け皿にと決められた。

センターへの電話は年々増え続け、昨年は約1万5千件に達した。電話がかかってくるのが多い時間帯は深夜。「『死なないで』と止めるのではなく、相手の気持ちを百パーセント受け止めるところから始める」と西原さんは電話を受ける心構えを語る。相談者から「説得しない所だから信用できる」の声も受けるという。「自死したいとはなかなか言えず、黙ったまま口を封じて死んでしまう人が多い。まずは本音を吐き出してもらう」

電話相談以外にも同センターとカトリック目黒教会を会場に、毎週「コーヒーハウス」を開催している。男性の参加者が多く「男性が孤立化している。なんとなしに話ができる場がいいんでしょう」。