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時流ワイド

自死と向き合う宗教者(3/6ページ)

2012年11月22日付 中外日報

生きているだけでいい

曹洞宗長寿院住職の篠原鋭一さん(68)が代表を務める「自殺防止ネットワーク風」には、北海道から九州まで自死相談を受ける各地の寺院僧侶が集う。

篠原さんは自死念慮者に関わるようになって約20年。24時間対応で念慮者や自死遺族の電話を受け、千葉県成田市の自坊を開放して、相談に乗ってきた。現在は自坊と東京都内の相談所を往復する。

死を見つめるまでに至った事情、経過をとことん聞く。相談の電話は各地からかかってくる。「私たちができるのは電話がかかってきた時に丁寧に受けて、いつお寺に来ますかと時間を約束すること。かけてくる側と受ける側がつながっている状況をいかにつくるかを工夫する」

相談者は複数の悩みを抱えることも多い。例えば、ある女性相談者は自身がうつ症状を抱え、障害がある子供が学校でいじめに遭っている。夫は家庭に無関心だ。悩みを聞き取り、整理するだけでも何時間もかかる。その後、アルコール依存症、薬物依存症など専門性が要求される悩みには専門の施設を紹介。相談者と一緒に行政の窓口に相談に赴いたり、DVなどの被害者には女性シェルターへつなぐ。

相談への態度を「死を見つめるまでに行き着いた過去をとことん聞く。丸ごと受け止めてあげる。さまざまな苦悩を背負っている人の苦しみに寄り添い、解決を探る一歩を始める手伝いをする」と篠原さんは語る。

篠原さん自身が死を考えた経験が活動のきっかけになった。42歳の時、くも膜下出血で倒れ、一命を取り留めるも後遺症が残り、何もできない。病院の屋上から幾度も飛び降りかけ、ほかの患者に止められた。訪ねてきた僧侶仲間が「生きているだけでいい! おれたちが面倒を見るからお前は生きてるだけでいいんだ!」と、励ましてくれたことが支えとなった。3年以上のリハビリ生活を経て回復した。

ネットワークに参加する僧侶には「住職のやり方でやってください」と言っている。寺院によっては寺族も活動に参加するようになった例もある。「僧侶は見て見ぬふりはできない、という共通した思いが根底に流れている」と語る。経験を分かち合うため、年に1度は集まり、会議を開くほか、複雑な問題への対応については随時相談が来るので、一緒に考える。