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時流ワイド

自死と向き合う宗教者(5/6ページ)

2012年11月22日付 中外日報

仏教のプロとしてメールで問いかけ

自死念慮者の多くは「孤独」を抱えている。「本音は言えないし、聞いてもらえない」。そんな彼らがつながりを求める先に、インターネットの世界がある。現実世界では言えない「死にたい」の一言が発せられ、受け止めてもらえることもある。

ネットで人々の苦悩と向き合っている兵庫県宝塚市の真言宗僧侶・今城良瑞さん(41)。今城さんが相談に乗っているのは、虐待やDV、いじめなどで心に大きな傷を負いトラウマを抱える人たち。それらのトラウマが自死の要因になり得ると指摘されている。

今城さんがメールでの相談を始めたのは平成17年ごろから。メールを使うのは「時間の制約を受けない。文章にするという作業の中で、自分の考えを再考する時間が持てる」といった利点から。相談する側も、文章化することで自分の気持ちを整理できる。その半面、メールでは相手の感情をくみ取ることが難しいが、「何度もやりとりを繰り返す中で、相手と信頼関係を築くことは可能」と今城さんは語る。

今城さんはネット上で自らが僧侶であることを明らかにしている。そんな今城さんの元に寄せられる相談の中には答えを求めてくるものもある。

カウンセリングは傾聴、聞くことが基本。しかし、「ずっとこのままなのでしょうか」との問い掛けに、「諸行無常」という言葉を使いながら「仏教的にはこういう解釈もありますよ」と答えることもある。

最初は、「宗教的な話はしない方がよいのでは」と思っていた今城さんだが、相談を受け続けているうちに、「救われるのなら、仏教でも何でもいい」という相談者の追い詰められた思いに気付いた。この苦しみから逃れられるのなら、何にでもすがりたいという切実な願い。

だから、彼らとは常に真剣勝負。「中途半端な言葉だと斬り返される。おざなりの法話程度の言葉ではこちらがやられてしまう」。そこまで向き合うことで信頼関係が深まる。同時に相談方法もメールから電話、さらに面談へと変わり、相手との距離を縮める。最終的には、カウンセラーや医者など専門家の手も借りながら、問題解決を図っている。

今城さんは言う。「自分は仏教のプロ。プロのカウンセラーではなく、宗教のプロに話を聞きたいと、わざわざ自分を選んでメールを送ってくれている。聞くことももちろん大事だが、問い掛けに答えられないんだったら、彼らが宗教者に聞く意味はない」。彼らの思いにどう応えるか、宗教者として試されているようにも感じる。